【インタビュー】映画「炎上する君」女優・中井友望「トモ役は私にしかできないと思った」

「少女は卒業しない」や「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」など話題作に出演が続く女優・中井友望。今秋には初主演映画「サーチライト-遊星散歩-」を控えるなど、’20年に女優デビューして以降、着実に評価を高めている。今回、西加奈子原作&ふくだももこ監督の注目映画への出演に際し、その役づくりから、自身の成長や変化について語ってくれた。 

——8月4日(金)公開の映画「炎上する君」で、主人公の梨田(うらじぬの)と浜中(ファーストサマーウイカ)と居酒屋で出会うバンドのボーカル・トモを演じています。 

「西加奈子さんが大好きなので、もともと原作は読んでいました。ただ、映画化すると聞いた時は、あの原作をどう映像化するのか想像がつかなかったです。でも、脚本を読んで『あー、こうなるんだ!』ってワクワクしました」。 

——自分の役柄はどう捉えて、どうアプローチしたんでしょう? 

「まず、トモは私のための役だと思いました。トモは私にしかできないし、そういう役を(監督の)ふくだ(ももこ)さんは作ってくれたんだって、それが何よりもうれしかったです。だから、キャラクターをどう作るかはあまり考えずに、現場で共演者の言葉をそのまま受けて自分がどう感じるか、それをふくださんに撮ってもらうというアプローチでした。梨田と浜中は原作にもある役ですけど、トモは原作にいないんですよ。でも、映画ではトモという役を作ることによって、分かりやすく何かに傷つけられて、何かに救われる一人の女の子の物語が生まれるんです。梨田や浜中に気持ちを寄せるのが難しい人でも、トモに共感する人は多いんじゃないかなって、そういう大きな意味を持つ人物だったと思います」。 

——「私にしかできない」というのは? 

「私にしかできないっていうか、その前に自分が絶対に演じたい役でした。それは、この作品だけじゃなくて、どの作品の役でも思いたいことなんですけど」。 

——トモは劇中で大きな変化を遂げますが、それ以外のシーンやエピソードも、笑えたりぐっときたり、いろいろ考えさせてくれたり、楽しみ方の多い作品でした。 

「描いていることはいっぱいありますけど、私はそこについて深く考えるというよりは、見終わった後に、『すごく面白かったなー』って思ってもらえたらいいかなって。映画の中に登場する『君は何も悪くない』ってセリフで、そう思わされました。いろんなことはすごくシンプルで、簡単でいいんじゃないかなって」。 

——梨田と浜中は毎日のように2人で銭湯に行っていますけど、例えばこの映画を見て「銭湯っていいなー」という気持ちになるだけでもいいというか。 

「そうです。この映画を通して伝えたいことはたくさんあるのかもしれないけど、そんな難しい映画じゃないと私は思っています」。 

——中井さん自身も、劇中のトモのように何かを感じて自分が変わっていく経験は、これまでにもあったと思います。その中でも、特に大きかったと感じている変化は? 

「この1年半ぐらいで自分に余裕ができてきて、楽しいことが増えました。それは大きな変化です」。 

——それは、仕事が充実しているから? 

「それはありますね。去年は半年間ぐらいの間に、今回の『炎上する君』と初主演映画の『サーチライト-遊星散歩-』(’23年秋公開)、『少女は卒業しない』(’23年2/23公開)を撮ったんですけど、その期間でめちゃくちゃ自信がつきました。そこで、今の私はお芝居を楽しめていたら、それだけでいいんだって気付いたんです。過去の人生を引っ張り出して、悲観的に考えることなんていらないんだって(笑)。3作品とも、自分が想像していなかった感情がパッと出てきた瞬間があって、その瞬間に出会うために私はお芝居をしているんだなって思えたんです。それで変われたんだと思います」。 

——「自分が想像していなかった感情」というのは? 

「このセリフで私って涙が出るんだとか、この瞬間にこんなに心が動くのかとか、そういう“自分が想像していなかった感情”です」。 

——そういった変化があったことで、プライベートも変わりましたか? 

「めっちゃ変わりました。時間を無駄にしなくなりましたね。前の私は時間があることが怖くて嫌だったんですけど、今はやりたいことがいっぱいあって、そこに使える時間があることがうれしいです。映画を見たり、本を読んだりする時間も増えました。あと、花とか買っちゃったりして(笑)。だから、花瓶も買ったんですよ。花を買うなんて、余裕のある人しかできないことだと思っていたんですけど」。 

——そう思っていたのに、今は花を買うようになったということは、実際に余裕が生まれたからなんでしょうね。ところで、劇中の梨田と浜中の会話には「唯一無二の親友だ」や「何があっても味方だ」という言葉が登場しますが、中井さんにもそういう存在はいますか? 

「梨田と浜中みたいな関係って、滅多にないですよね。あんなにずっと信頼して一緒にいられる関係はうらやましいけど、ちょっと怖い部分もあります」。 

——そういう存在ができそうだったとしても、その人がいなくなる怖さがあるから、あえて「唯一無二の親友」や「何があっても味方」という存在を作らないようにしている部分が、無意識かもしれないけど人にはあるのかもしれません。 

「物理的な距離としてはずっと近くなくてもいいから、心の中でそう思える人がいればいいと思います。そう考えてみると、いるかもしれないです。それこそ、ふくださんがそうです。人って生きていたら色々あるし、不安になったりもするじゃないですか。でも、ふくださんに会うと、『あー、全部大丈夫だ』って毎回思うんですよ。ふくださんは、すごく真っすぐでかっこよくて面白いし、どこか自由奔放にも見えるんですけど、ちゃんと繊細で人間味があって、ストレートな言葉で愛を伝えてくれる人です」。 

——今までに、どんな愛の伝え方をされましたか? 

「ふくださんに初めて会った時の私は、19歳でめっちゃしんどくて、病んでいた時期でした。その時に『居場所がない』って私が言ったら、ふくださんは『私の映画が、友望の居場所になると思うよ』って言ってくれたんです。私、そう言われた時にめっちゃ救われて、実際に今回の『炎上する君』でもトモという居場所を作ってくれて。ふくださんって、そういう人なんです」。 

——ふくだ監督は、自身の理想像でもあったりする? 

「そうですね。ふくださんみたいな大人になりたいなって思います。高校生の時の私は、なりたいと思う大人なんてこの世にいないと思っていたんですけど(笑)」。 

目次

「炎上する君」

西加奈子の同名短編小説を原作に、固い絆で結ばれた梨田(うらじぬの)と浜中(ファーストサマーウイカ)という、無二の親友2人が生きる不思議な日常を描く。女性への偏見や抑圧に憤りを感じつつ、自分らしく自由に生きる人生を求める梨田と浜中を始め、2人が居酒屋で出会うトモ(中井友望)、“炎上する男”(齊藤広大)など、不器用ながらも懸命に前を向こうとする人々の生き様がクスッと笑えてほんのり泣ける、人間讃歌のような物語。 

8月4日(金)より東京・シネクイント、大阪のシネ・リーブル梅田ほか全国で公開。 

公式HP: https://enjyo.lespros.co.jp

公式Twiiter:@Enjyo_Movie

公式Instagram:@you_are_lit_movie

なかい・とも

2000年1月6日生まれ。大阪府出身。山羊座。B型。2020年に女優デビュー。
以後、映画「かそけきサンカヨウ」(’21年)、「少女は卒業しない」「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」(ともに’23年)、などに出演。
初主演映画「サーチライト-遊星散歩-」が’23年秋に全国公開予定。 
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