2025年6月15日に東京・Zepp DiverCityにて開催された
第1章はこちらから
「結成2周年記念 僕が観たかったワンマンライブ vol.2」。
2年前の同日、同場所にてお披露目されたメンバーたちが
2年間たくさんの努力を重ねながら走り続け、パワーアップして帰ってきた。
この日のメンバーたちの様子を、全4回に渡りお届け。

アンコールも含めて2時間半のライブとなった。率直に言って、とてもいいライブだった。歌、ダンス、MCというメンバーが担う面だけでなく、セットリストや映像など演出面も含め、これまでになく一つのライブとしてまとまりと見応えがあった。ライブ本編が終わり、アンコールまでの間、2年間の感謝の気持ちをファンへ伝える、メンバー1人ずつのメッセージが流れた。ステージの大型モニターには客席が映し出され、メッセージが流れているメンバーのグッズを手に持つファンがクローズアップされていった。僕青ではこれまでこういう演出はなかったと思うが、ライブ本編終わりでのこれが個人的にぐっと来た。僕青を支えている人たちの顔が、文字通り見えたというか。2年前のデビュー記念スペシャルイベントでは100人ほどしか集まらなかったファンが、この日の会場となったZepp DiverCity(TOKYO)では2200名のファンでいっぱいになった。〝乃木坂46公式ライバル〟としてはまだまだの広がりには違いないが、この2年間、着実な歩みを続けてきた僕青を、応援してきてくれた人たちが確実にいる。メンバーのメッセージが流れる中、大型モニターに映るそのファン一人ひとりが、本当にこのグループを支えてきた。坂道を駆け上がろうとがんばるメンバーと、それを応援するファンという、幸福な関係性がここにはある。

ファンの応援に応えようとメンバーたちが本当にがんばっていることを、取材を通して私は知っている。その成果が、この2周年記念ライブはとても感じられた。私が東京で見てきた限りの2年間のライブの中で、一番のパフォーマンスだったように感じた。全国ツアーへ向けたかなり厳しい合宿を経て、ツアー初日公演でも確かに成長を感じたが、それよりも伸び代のほうを強く感じていた。そうして、この日までに13公演を行ってきて、間違いなく力を付けてきた彼女たちは、ツアーファイナルでもある今回の2周年記念ライブで、しっかりとその成果と成長を見せつけてくれた。


歌は、明らかに厚みが増していた。最近の僕青は、歌にだいぶ力を注いでいて、合宿でも〝踊りながら歌う、歌いながら踊る〟ために息継ぎなどの技術や、客席に歌を届けるためにただ歌うのではなく、気持ちを込めることなどを学んできた。そして、練習とツアーという実践を繰り返してきて、大きく見違えた。初日公演では全体曲でもメンバーの誰かしらの声が目立って聴こえたりしていたが、そういうこともなく、グループとしての歌声のまとまりが客席に迫ってくるように響いてきた。全体の声量があがっていたのだから、当然、個別パートの歌唱も各々の声が以前よりも格段に聴こえてきていた。メンバー間で差はあれど、それぞれがそれぞれのレベルで成長していたと思う。

金澤亜美&安納蒼衣&工藤唯愛による新ユニットは、僕青史上一番かわいらしい曲であろう「キッシュ・ラブ」を、かわいらしいダンスとともに披露してくれるのだが、初日公演では歌唱があまり聴こえてこなかった。もともと話す声も小さい3人だが、今回のライブでは初日公演よりはるかに声が出ていた。3人ともかわいらしく歌って踊っていた。とはいえ、もっともっとこのユニットはそのかわいらしさを歌で届けることができると思う。3人とも負けず嫌いな性格だから、ツアー後もきっと、よりよいものに仕上げようと努力するだろう。





歌に関してはあと、歌詞をどう歌で伝えるかというところでの表現力もついてきたし、何よりいいなと思ったのが、その瞬間の気持ちが歌に乗っていた。柳堀花怜のがむしゃらさとか、八木仁愛の強い気持ちとか、そういうその瞬間に彼女たちが抱いた気持ちが歌から感じられたような気がした。それはライブの醍醐味だし、胸に響いてくるものがあった。


僕青のダンスが、ほかのグループとは違う独自性のある振り付けで、それを踊るメンバーのスキルがかなり高いことは、ファンの間ではもう知られていることだろう。この2年間、ちょっと驚くほどのスピードでダンスは上手くなっていった。ライブも重ねていたし、とにかく練習を怠らなかった。さらに、合宿とこのツアーを通して、ますますよくなっている。2周年記念ライブで感じたのは、メンバーそれぞれに個性が出てきたことだ。性格や人柄もにじみでてきているような、その人らしさがダンスに出てきた。
長谷川稀未がちょっとした動きをあえて大きくしてメリハリをつけていたりするのは個性だろうし、塩釜菜那がいつになくがむしゃらに大きく踊っていたのは彼女の今の気持ちを表していただろう。



そんな風に、それぞれが教わったフリをなぞるのではなく、自分らしく踊れるようになってきて、いっそう見応えがでてきた。それぞれの個性が発揮されながら、バラバラには見えず、不思議とまとまりがあった。開演前の円陣の時に「僕青らしいなあ。僕青っていいなあ」と感じたものと同じような空気感と言おうか、雰囲気と言おうか、そういう僕青らしさみたいなものが、ダンスと歌──パフォーマンスからも伝わってきた気がした。彼女たちと取材で接している時にそういうものを感じたことはあっても、パフォーマンスから感じたのは初めてだった。

僕青がダンスに力を注いできたのは、デビューシングルから5作連続でセンター(メインメンバー)を務めてきた八木の存在が理由の一つだろう。ここまでまぎれもなく僕青のダンスをリードしてきた。彼女の存在が刺激となり、メンバーたちを切磋琢磨させてきた面もあろう。八木も惜しむことなくメンバーにアドバイスをしてきた。
岩本理瑚はダンス未経験者でありながら、「仁愛ちゃんみたいになりたい!」と公言して、たった2年で自分らしいダンスを踊れるまでに上達した。


岩本に限らず、だ。それぞれがそれぞれに努力をしてきた成果がここに来ていよいよ出てきたから、いい意味で八木が突出して目立たなくなった。もちろん、僕青にとって八木はその唯一無二の表現力できっとこの先も特別な存在だろう。だが、23人全員がレベルアップした上、自分らしい表現も兼ね備えてきて、八木に留まらず、6thシングルでセンターに立つ杉浦英恋をはじめ、そのダンスで目を引くメンバーが俄然増えてきた。


それを見せつけるように2周年記念ライブのセットリストは、八木のセンター曲が並ぶのではなく、早﨑や杉浦ら八木以外のメンバーのセンター曲のほうが多く、ほぼ1曲ごとにセンターに立つメンバーが入れ替わった。この2年で、センターに立てるメンバーがしっかり育っていて、グループの層の厚さと自信を感じさせるセットリストになっていた。



僕青は、5thシングル「恋は倍速」から“センター”という呼称をやめ、“メインメンバー”と言うようになった。それは僕青のダンスが、センターを軸にして展開していくものではないからである。アイドルグループのオーソドックスなダンスは、最初から最後までセンターが最前の真ん中で踊っていることが多いが、僕青の場合、センターであるはずのメンバーが、センターではないポジションにも行ったり来たりすれば、センターではないメンバーが真ん中でパフォーマンスをすることもある。センターを真ん中に据え続けることよりも、歌詞や曲の世界観を、まるでミュージカルや演劇のように、メンバーそれぞれが役割を担って、全体で一つの絵を表現することに重点を置いているのだ。「暗闇の哲学者」で短針と長針が動いていく時計を形作ったり、「あの日、僕たちは泣いていた」で駐車場や坂道など風景を描いてみせたりするように。ただし1曲ごとにメインとなるメンバーはいるから、センターではなく、メインメンバーという言い方に変更された。



このダンスにおける僕青ならではの思想は、どちらが先にあって、どちらが後にできたのか分からないが、ここまで書いてきたメンバーたちの現状とも一致しているように思う。グループとしての一体感を大事にしながら、メンバーそれぞれの自分らしさも大事にしているその現状と。また、ダンスに限らず、2周年を迎えた僕青というグループ自体からこんなメッセージも感じてしまう。その時々でその場のメインを担う人間はいるが、いつだって自分の人生のセンターは自分だ、と。

僕青においてセンターは23人全員なのである。



(つづく)
※次回更新は、6/29(日)予定です。
撮影=田中健児
取材・文=小畠良一
★ライブスケジュール★
【雲組単独公演 #20】
2025年7月11日(金) 東京都・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE2025年7月17日(木) 愛知県・NAGOYA JAMMIN’
2025年7月18日(金) 大阪府・ESAKA MUSE
【雲組単独公演 #21】
2025年8月21(木) 東京都・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
【アオゾラサマーフェスティバル2025】
2025年8月31日(日) 東京都・豊洲PIT
【超雲組公演 HYPER】
2025年9月27日(土) 東京都・LIQUIDROOM
【僕青祭2025】
2025年10月18日(土) 神奈川県・KT Zepp Yokohama
詳細は>>https://bokuao.com/