牧野アンナが語るアイドルの現在地(第3回目)

<第3回>

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「原宿駅前ステージ」の振りつけに留まらず、演出並びに原宿駅前パーティーズの育成も手がける振付師の牧野アンナ先生のロングインタビューも今回で最終回。10代の少女たちの“今”に迫ります。
 ふわふわがこの1年足らずの活動で変化したところはありますか?
「振りの覚えも早くなりましたし、こっちの意図を汲み取ってくれるようになりました。技術的にはそこまで変わってないんですけど(笑)、見せ方が変わりましたよね。ふわふわに関しては上手になることじゃなくて、見せ方が大事だと思っていて。前までは無防備すぎるというか、もっと自分がこう見せたいっていう意志がほしかったんです。でも、ただただ必死になっているっていうだけで。それはそれでファンの人たちからしたら、ぐっと来るところもあるかもしれないんですけどね。一番わかりやすい例が、塚田百々花ですね。彼女は途中から加入してきたんですけど、ほんと無防備で、自分がアイドルとしてステージに立っている意識があるの? って感じだったんです。顔もずっと無表情で(笑)。どんなにかわいい振り付けをしても、あの顔で踊られたらなんにもならないんですよ。立ち姿も膝が開いたまんまで、ぼーっと立っていて。そういうところが全体的にみんな改善されていきましたね」。
 そこはどうやって改善させたんですか?
「もう『顔!』ってしつこく注意していきます(笑)。百々花なんかはたぶん『振り、次なんだっけ?』ってなっていると思うんです。彼女はあとから入っているので、一気に全部の曲の振り付けを覚えなきゃいけなかったから。位置の移動も慣れていないと、次どこだっけってなるし、ほかのメンバーにぶつかって、周りに迷惑をかけちゃうから、必死になっている状態で、かわいく踊るどころじゃなかったんですよね。でも、どんなに頭の中で“なんだろなんだろ”って思っていても、絶対に顔はちゃんと意識しないとダメだから『練習のときからその癖をつけなさい。ステージになって突然やろうとしてもできないから。わからなくなっても、忘れてしまっても、ハっとならず、ニコニコしながら周りをちらっと見てマネしなさい』って最初はちゃんと説明するんです。でも、そのあとはもう『百々花! 顔!』って(笑)」。
 そうした変化もありつつ、ふわふわの現状は今、どんな感じでしょうか?
「またまだ発展途上というか、上手くなくていいけど、もっと魅力的に見せる要素がたくさんあるので、踊り込みはもっと必要でしょうね。あとは彼女たちはステージに立つ機会がすごく多いだけに“慣れ”にならないようにしないといけないんです。常に公演に来てくれている人たちだけに意識が向いてしまうと、いろんなことが許されてしまう。例えば、振りや歌詞を間違えても、いつも来てくれている人はそれはそれでたまに見られていいと思ってくれるけど、初見の人たちにしたらよくわからないじゃないですか。その子のキャラクターも理解してもらってない中でのことですし。だから、慣れ合いにならず、新鮮さを毎回ちゃんと出すことが大事。本人たちが意識がなくても気が緩んでくるもだから、それを指摘してあげないとわからなくなっちゃうんですよね」。
 実際、慣れ合いになってきているなって感じた時期があったんですか?
「ありますあります。それはふわふわだけではなくて、原宿駅前パーティーズ全体としても。私がガッツリあの子たちとやれるのは、大きいステージがあるときなので、初めての外公演となった赤坂BLITZのときもそうだし、その次の竹芝NEW PIER HALLのときもそうだし。そういうリハーサルのときに『何、気を抜いているの?』って私に言われて、はっと自覚しているときがありますね。それでまたリハーサルを始めると、ちゃんとやるんですけど、変わらないんですよ。見ている人に伝わるレベルの一生懸命ってそんな簡単にできるものではなくて」。
 意識を持ち続けることって、難しいですよね……。
「自分ではどんなに一生懸命やっているつもりでも、この世界では人が見てそう感じなかったら、やってないことになってしまうから、『私が見て一生懸命だと感じなかったら意味がないからね』って教えるんですけど、できないんですよね。だから、自主練をするのはいいけど、気を抜いて自主練をしても、一生懸命できない自分を積み重ねていくだけだから、自主練をするんだったら、常に全力でやりきる習慣をつけていかなかったら、自分たちの感性も表現力もダメにしていくんだよって、まー怒鳴った怒鳴った(笑)」。
 で、どうなったのでしょうか?
「それは赤坂でも竹芝でもすごく言ったことなんですけど、どっちのときだったかなあ。『とりあえず次、ちゃんとできなかったら、もうやらなくていいや。今日はリハーサル、止めね』って告げても、やっぱりできなくて。そしたら、(原駅ステージAの磯部)杏莉が『もう1回やらせてください!』って言って来たんです。『杏莉が思っているだけでしょ? ほかは誰も言わないじゃん。もうこれで終わりでいいと思っているんでしょ?』って問いただしたら、何人かがちょろちょろって来だして、そのあと、それに続くように全員がわーっと集まって来たんです。『人が来出したら来るって空気は何? ほんとにやりたいか1人ずつ聞かせてよ!』ってまた怒鳴ると、みんな急に『やらせてください!』みたいな(笑)。『いやいや、ほんとにやりたい人のやらせてくださいはそんなもんじゃないから! 何その言わされている気持ちのないやつは! そんなんでやらせるわけないじゃん! はい、もうおしまい!』って終わりにしました」。
 えー! 厳しい……。泣いている子もいたのでは?
「いましたね。なんでもかんでもレッスンやリハーサルが当たり前のようにできると思わないでほしいんですよね。私は真剣だし、最高にいいものを作ろうと思っているから、彼女たちだってそういう気持ちで来なかったら、やっても意味がないし、一緒にやれない。ステージに立つ自分たちが、こうなりたいっていうイメージを持ってそこにいなければいいものになるわけがないですから。本来、彼女たちが私たちスタッフを引っ張らなきゃいけないんですよね。この子たちがこんなにがんばっているから、もっと私たちもやらなきゃっていう気持ちにさせなきゃいけないのに、ただただ私をいらつかせているだけですから(笑)。3、4回リハーサルがある中で、そこがなかなか改善されなくて、赤坂BLITZはあんまり評価がよくなかったんですよ。次の竹芝NEW PIER HALLのとき、同じ失敗をしたら次はないよってことを伝えました」。
 どういったステージを作ることが大事だと思いますか?
「彼女たちを見たいと思っている人がライブには来るんだから、楽しかったな、よかったなって感想はそんなにいいことではないんですよね。今はSNSの時代だから『あのライブを見ないヤツらはバカだ!』っていうくらいの熱量で書かれないと失敗と思っていい。ほんとにいいライブだったと思った人はそれくらいの熱量の言葉を拡散するってことも話しましたね。じゃあ、彼女たちにできることはなんなのかって言ったら、もうがんばるほかにないじゃんっていう。なんとか楽しんでもらおうっていう一生懸命の気持ちでレッスンから取り組まなかったらダメで、そこの気持ちをきちんと作ることが大事なんです。それだけ言っても、エンジンがかかるのが遅いんですよね、あの子たち(笑)」。
 ふわふわはフワフワなんで、しょうがないっす!?
「あはははは。でも、5月のお台場(Zepp DiverCity Tokyo)のときには変わっていたんですよ。前まではリハーサルが始まる前、杏莉がみんなを集めて何か言うとか、各チームで話し合うとかが一切なく、わーっと集まって来て何しましょうかっていう感じだったんです。それがお台場のときから、杏莉が『ちょっとすいません。時間ください。みんな集まって〜!』って声がけをして、ライブに対しての意気込みとか、こういう気持ちでやって行こうとかを話し合っていたんです。チームごとにもそれぞれ集まって話をしていましたね」。
 意識が変わった瞬間ですね!
「だから、そこの部分の注意をもうする必要がなかったんです。とにかくがんばりなさいっていう注意を。それってアドバイスとしては1番くだらないもので、そんなことなんで言わなきゃいけないのっていうことなんですけど、ステージっていうところには、がんばる人たちがいないといけないから。そこはやっと脱してきたかなっていう。そういう意味での成長は原宿駅前パーティーズのみんなから見えますね」。
 でも、牧野先生が言うところの“がんばる”は、人にも伝わる“がんばる”でなければならないわけですよね。
「いつでも一生懸命かわいくみせないといけないんです。誰かが自己紹介をしているときに、後ろでぼーっとしてちゃダメなんですよ。常に気を張っているというか、そこにちゃんと自分がエンターテイナーとして立っていないといけない。端っこで歌パートがないときでも、常に自分をどう見せるかっていう意識を持っていてほしい。全員がその役割を100%果たすことで、チームとしてやっと圧が出てくるので。そこをがんばっているのがふわふわ18人の中で3人くらいで、あとが気を抜いていたら、その3人分のパワーしか出て来ないんですよ。18人で100人分くらいのパワーを出すためには、最低限1人前の仕事を一人一人がしないといけない。それなのに1/18くらいの気持ちでいるんですよ。全体曲のリハーサルのときに、軽く口ずさむだけとか。それさあ! っていう(笑)。みんなで思いっきり声を出すから迫力が出るわけで、マイク(の電源)が入っているか入ってないかは置いておいて、気持ちとして出すっていうことをしないといけないんです」。
 最後に、牧野先生が思うふわふわ、しいては原宿パーティーズの今後の課題は?
「それぞれの個性をいかに出していくかっていうことだと思っています。自分の勝負場所っていうのが、後列の子たちは、なかなかないように思ってしまいますけど、実はあるんですよ、ちゃんと。『原宿駅前ステージ』の公演で言えば、ファッションショーのときとのお題とか、自分の個性を出すタイミング、勝負するタイミングはあるのに、それをそんなに活かしきれていないんです。ほかのメンバーと同じことを言ったり、アプローチが似ていたりして、面白くないんですよ。ふわふわのメンバーが18人いたら18の個性がないと。同じ個性はいらないんです。自分のキャラを確立していくことをしていかなかったら、ファッションショーのお題をする意味がないし、そういうトークやMC、バラエティー的なところで個々のメンバーについては好きになってもらうことのほうが多いですから。それこそ、『こんにちは!』の一言でも、台本にそう書いてあるからっていうのではなく、本気で『こんにちは!』って気持ちを持って言わないと伝わらないんです、お客さんに。本物にしてくる努力をそれぞれがすることで、『こんちには!』の一言でもそれぞれのメンバーで違ってくるはずなんです。それくらい自分の個性を出すっていうことを考えないといけない。そこが強くないと、強烈な個性のアイドルたちが今、たくさんいる中で、ほかに勝てないですよ。歌とダンスだけで勝負するのはアイドルじゃないから。アイドルはしゃべりや個性も引っかかりとして重要なので、そこの意識をもっともっと持ってほしいですね」。

 

(完結)

 

●PROFILE

牧野アンナ(まきの あんな)

’71・12・4東京都出身。

沖縄アクターズスクールでチーフインストラクターを務めた後、’08年より振付師として活動。AKB48の「ヘビーローテーション」をはじめ、数々の振付を手がけてきた。

 

text=小畠良一