僕たちが見たかった青空は どこにある?「結成2周年記念 僕が観たかったワンマンライブ vol.2」を見て考えたこと。 第4章

2025年6月15日に東京・Zepp DiverCityにて開催された
「結成2周年記念 僕が観たかったワンマンライブ vol.2」。
2年前の同日、同場所にてお披露目されたメンバーたちが
2年間たくさんの努力を重ねながら走り続け、パワーアップして帰ってきた。
この日のメンバーたちの様子をお届け中。

「僕青においてセンターは23人全員なのである」。

青春の1シーンを描いたような僕青の群舞は、1曲の中でセンターに立つメンバーがどんどん入れ替わっていく。それぞれの青春でそれぞれが主人公であるように──。

第1章はこちらから
第2章はこちらから
第3章その①はこちらから
第3章その②はこちらから
第3章その③はこちらから
第3章その④はこちらから

第3章ではメンバーを一人ずつ取り上げたが、それぞれが物語の主人公で、僕青のセンターであることが伝わっていたら幸いだ。そしてそれを体現するのが〝メインメンバー〟という僕青ならではの群舞に対する考え方であることはすでに第2章で触れた。さらに、それぞれのメンバーがパフォーマンスをとことん追求しているのも、同じような考え方からなのだ。全員が主人公でセンターであるならば、それに見合った輝きを、個性をそれぞれに放っているべきだから。僕青の振り付けやダンス指導に加え、ライブ演出も手掛けているチーム・ENTANARDに、ツアーパンフレットでインタビューした際、リーダー的存在のShin.1さんがこう話してくれた。

Shin.1「全員でただ振りを揃えるっていうことに、僕ら的にはそこまで重きを置いてなくて。細かい角度とかまできっちり決めて、この振りはこれが正解みたいな形にしちゃうと、それ以上伸びなくなっちゃうんです。それよりも自分の個性を出して踊ってほしいなと思っていて。全員が同じ方向を向きながらも。(中略)僕らが作った振りをただなぞったり、ただ揃えたりするよりも、メンバーそれぞれの内から湧いてきたものによって、いびつさがあったほうが面白い。個性がそれぞれにありながらもグループとして一つになっているっていうのが、僕青の形になればいいなと思っています」

それぞれが個性的に踊りながらも、不思議と一体感が生まれる──。そういう世界を、僕青は目指しているのだ。それを実現させるために、23人は日夜、レッスンに励み、パフォーマンスの向上に努めている。しかし、そのパフォーマンスをファンの前で披露し続けていくためには、解決しなければならない問題がある。ライブ本編の最後の曲の前に、八木が語りだした。

八木「みんなパフォーマンス力はだんだん、全国ツアーも通して上がってきているんですけど、現実的なことを少々言いますと、表面的にはまだ……、まだ僕青って全然で。いつも応援してくださる方々の期待に応えきれてない部分があるんだろうなぁってすごい思って。努力しても、ね、報われないことだってたくさんあったし、(ファンに対して)申し訳ないなって思う気持ちも……あるんですよ。皆さんのことが私たちもすごく好きだから。でも、こんな2周年の日にさ、ごめんなさいって謝るのは私、昨日一晩考えて、違うなと思って。だから、(ファンの期待に応えきれてないのに)それでも私たちの可能性を信じてついてきてくれて、応援してくれて、ありがとうだなって。ほんとこの言葉に尽きるなって思ったので、言わせてください。本当にいつもありがとうございます」

会場から拍手が起こった。八木は話を続けた。

八木「明日からはね、3年目に私たち、なるんですけど、そんな皆さんからいただく期待とか可能性を信じてくれるみんなに恩返しができたらなというか、その期待を超えていけるように、これからも一歩ずつでもいいので、わずかな光でも信じて進んでいけたらいいなと思います」

「まだ僕青って全然で」という言葉に胸が締め付けられた。そんなことをわざわざ言う必要はなく、大きな夢だけを語っていればいいのかもしれない。でも、八木は〝夢〟より〝現実〟を語った。ファンに対する八木なりの誠実さから。結成から2周年という時間の流れが、ただ夢を見ることより、厳しい現実に目を向けさせていた。しかしそれは悪いことではなく、夢を本気で実現させようとしているからこそ、現実が大きく立ちはだかってきたのだった。結成2周年記念ライブの1週間ほど前、B.L.T.8月号に掲載されている八木のインタビューを行ったのだが、そこで「もともとは私、夢見がちだったんです。でも、だんだん現実主義者になっていってしまって」と、そのいきさつと心の流れを赤裸々に語っているので、ぜひあわせてご一読いただきたい。八木のMCは最後、こう締めくくられた。

八木「メンバーのみんなも、この2周年、僕青のメンバーでいてくれて、がんばってくれて、ありがとう。それはすごい伝えたいなと思ったので、ありがとう……本当にありがとう!」

八木のその言葉に、我慢できないという感じで塩釜が涙を流していた。なんだか私には「(6作目で杉浦に交代してしまうが)これまでのシングル5作、センターを、あるいはメインメンバーを務めてきた私を、受け入れてくれて、支えてくれて、ありがとう」と言っているように聞こえた。

その杉浦と八木が2人でメインメンバーを務める「炭酸のせいじゃない」が本編ラストだった。その披露を終え、今度は杉浦が話しはじめる。〝夢〟について。

「私は夢をね、どんどん叶えていきたいなって思うわけです。短い人生だからこそ、もうほんとにやりきってよかったって思える人生にしたいなって思っています。それでね、来年はアリーナを僕青は目指しております! きっとね、すごく辛辣な言葉も届くと思うんですよ、思っている以上に。『えー、できるの?』って、『(だいたい)誰?』みたいな。『僕青だよ!』って感じなんですけど(笑)。でもやっぱりこうして今日皆さんが会いに来てくれて、この景色を見て、私はきっと行けるって思いました。絶対に行けます! 絶対に立ちます!」

八木が現実を語り、杉浦が夢を語った。デビューから5作連続でメインメンバーを務めてきた八木は、僕青の顔としてこれまで、ほかのメンバー以上に、厳しい現実を目の当たりにしてきたことだろう。これから新しい僕青の顔となる杉浦は、臆することなくアリーナという夢を語った。とはいえ、杉浦だってこの2年間、グループとしても、一人のメンバーとしても、理想と現実の間でもがいてきたから、言うほど簡単じゃないことは分かっている。夢を叶えるためには、現実を見つめなければならないし、現実を打ち破るためには、夢がなければならないだろう。

杉浦「ちょうど2年前(の結成1周年記念ライブで)、とある人(※早﨑のこと)が言った言葉を私も真似して言わせていただくんですけど、夢を夢で終わらせたくないです。ほんとにこの言葉に尽きるなって最近特に思っていまして。もうね、叶わないかもしれないよ、夢だもん。でも、そんな夢を夢で終わらせたくないって、僕青は思うわけでございます。皆さんもそうでしょ。そう思ってくれますか? (沸き起こった歓声に対して)ありがとう。もっともっとこれから一緒にたくさんの景色を見に行きましょう。これからも僕青についてきてくれたら……うん? 違うな。一緒に隣りで歩いていってくれたらうれしいです」

夢を夢で終わらせないために、登らなければならない坂道はだいぶ急勾配だ。そこを登るメンバーのうしろをついていくのか、一緒に隣りで歩んでいくのか。杉浦が「ついてきてくれたら」を「一緒に隣りで歩いていってくれたら」と言い直したところに、杉浦のファンに対する思いが、いや、僕青のファンに対する思いがよく伝わってくる。23人が夢を叶えるための場が僕青なのではなく、23人とファンが一緒に夢を叶えるための場が僕青なのである。夢を叶えるための歩みを一緒に歩んでいけることは、僕青を応援する醍醐味と言ってもいい。

杉浦のMCで本編が終了し、続くアンコール2曲の合間には、リーダー・塩釜が夢も現実も引き受けて、最後のMCを務めた。軽やかに、でも切実に、嘘のない気持ちを言葉で紡いだ。

「どうでした、僕青のライブ? 最高だったでしょ。僕青の楽曲ってめちゃくちゃいい楽曲、多いよね。でも、私は言いたいんだ。僕青の楽曲だけが素敵なんじゃなくて、この23人がいる僕青だからこそめっちゃ素敵なの! それが言いたくて、ずっとうずうずしていたんだけど。実は今日……。毎回ライブする時に円陣をするんですよ。でね、この僕青のメンバー、こんなにいいのに、自信ないんですよ、どっか。だから、『隣の人の好きなところを言って』って言ったら、もうボロ泣きしはじめる子とかいて(笑)。どれだけがんばっても、自信をなかなか持てない子がいて。2年経ってもさ、まだ僕青にいてもいいのかなって考えている人、いるんよ。難しいよな、アイドルって。こんなにね、応援してくれている人がいるのに。でも、今日ね、このステージに立って、会場を見たり、配信を見てくださっている方もいたり、アンコール前にはさ、(ステージの大型モニターに会場の)ファンの方の顔が映ったり、うちわが映ったりしていたの、私たちも(裏で)見ていて、泣いているメンバーもいました。こういう場所があるからこそ、僕青23人がここに居続けられたんだなっていうのを改めて感じて、ほんとに(ファンの方には)感謝だなって思っています。ほんとにありがとうございます。だからこそ、この僕青のライブ会場っていうのを、もっともっと大きくしていきたいし、ファンの皆さんとも僕青(の23人)ともずっと一緒にいたいって思うんですよ。だから、私たちはまだまだがんばります」

そして、「こんなことをアイドルが言っていいのか分からないけど」と前置きして、こう言い放った。

「私たちはオワコンじゃないっすよ。オワコンじゃないんだ! まだまだこれからなんだ!! (『おー!』と会場に大きな歓声が上がる)。もう明日からね、結成して3年目が始まりますけど、これからまだまだ僕青の快進撃は続きます! ということで、皆さん、これからもぜひ僕青の応援、よろしくお願いします!」

僕青に対する批判をSNSかどこかで見たのだろうか。〝乃木坂46公式ライバル〟という大看板を背負っている以上、いろいろ言われてしまうのも仕方がない。でも、そこから逃げるつもりは僕青にはないのだ。だから、八木は「まだ僕青って全然で。いつも応援してくださる方々の期待に応えきれてない」と現状を率直に認めている。それだけ真剣に現実と向き合っているから、塩釜も「オワコンじゃないんだ! まだまだこれからなんだ!!」と言ってのけられるのだ。しかし、そんなことをわざわざ発言するグループも珍しい。ここ1年くらいのことだと思う。彼女たちが、悔しさや現実の厳しさを口にするようになったのは。2年目の活動に入り、思うようにいかない現実を目の当たりにしたからだろうが、そこでくじけずに、僕青は現実と戦っていくことを選んだ。

僕青の楽曲は、世間や社会への反抗ではなく、自分自身の過去や弱さと戦う歌詞が多い。その影響もあるのかもしれない。また、メインメンバーというポジションについての考え方、揃えるより個性的であれというダンスについての考え方、そういうものがすべてあわさって、今の僕青を形作っている。

結成2周年記念ライブは、パフォーマンスでもMCでも、そういう僕青の世界観を、これまでのライブの中でも一番出し切れたものになったと思う。

撮影=田中健児
取材・文=小畠良一

★ライブスケジュール★

【雲組単独公演 #20】
2025年7月11日(金) 東京都・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

2025年7月17日(木) 愛知県・NAGOYA JAMMIN’

2025年7月18日(金) 大阪府・ESAKA MUSE

【雲組単独公演 #21】

2025年8月21(木) 東京都・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

【アオゾラサマーフェスティバル2025】

2025年8月31日(日) 東京都・豊洲PIT

【超雲組公演 HYPER】

2025年9月27日(土) 東京都・LIQUIDROOM

【僕青祭2025】

2025年10月18日(土) 神奈川県・KT Zepp Yokohama

詳細は>>https://bokuao.com/

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