2025年6月15日に東京・Zepp DiverCityにて開催された
第1章はこちらから
「結成2周年記念 僕が観たかったワンマンライブ vol.2」。
2年前の同日、同場所にてお披露目されたメンバーたちが
2年間たくさんの努力を重ねながら走り続け、パワーアップして帰ってきた。
この日のメンバーたちの様子をお届け中。
「僕青においてセンターは23人全員なのである」。
青春の1シーンを描いたような僕青の群舞は、1曲の中でセンターに立つメンバーがどんどん入れ替わっていく。それぞれの青春でそれぞれが主人公であるように──。
第2章はこちらから
第3章その①はこちらから
第3章その②はこちらから
第3章その③はこちらから
八木仁愛
結成2周年記念ライブでの八木は、ダンスは言うまでもなくすばらしかったのだが、それよりも、彼女の目覚ましい歌の成長が気になった。初日公演よりもさらにパワーアップして、ソロパートも多い分、彼女の声がとてもよく聴こえてきた。太く低めで、よく通る歌声をしている。そしてダンス同様に、とても感情が溢れた歌い方だった。B.L.T.8月号掲載の八木のインタビューで、中島みゆきの歌が好きという話を聞いていたから、八木の歌声が、中島みゆきの野太く情感があって、心に突き刺さってくる歌声に系統としては近いものを感じた。いつか中島みゆきくらいの表現力で歌を聴かせてくれる日が来るかもしれない。ダンスに関してはすでに中島みゆき的な暗く重い力強さがあるのだから。そういう点でユニット曲「臆病なカラス」は、八木の良さが歌でもダンスでも前面に出た1曲になっていた。MVもいいが、特にライブでこそ八木は感情がほとばしっていてよい。しかし、このツアーあるいは結成2周年記念ライブでの八木のダンスについて触れるなら、「暗く重い力強さ」より、かわいらしさについてだ。硬派な曲では鋭い表情に挑発的な笑みを一瞬浮かべることがよくあって、そのパンチ力が凄まじい一方、さわやかな明るい曲では、笑顔が少しぎこちなかった。だが、今回のライブではアイドルらしいかわいらしい笑顔をとても自然にしていて、ダンスもキレキレに踊るばかりではなく、やわからな感じで踊っているのがとてもかわいらしかった。純粋に表現力の幅が広がったんだとは思うが、シングル5作連続でメインメンバーを務めてきた重圧から離れたことが、その自然なかわいらしい笑顔に多少なりとも関係があるのかなとも思ってしまった。これまでとは違うポジションと環境が、これから八木仁愛にどんな影響を与えていくのか、どんな変化をもたらしていくのか、楽しみでしかない。


柳堀花怜
開演前の円陣の時、「みんなのことが大好き!!」と涙を流しながら叫んでいた柳堀。レッスンでも、ツアー前の合宿でも、インタビューでも、ステージでも、柳堀が気持ちを抑えきれずに泣き出してしまう場面を何度も見てきた。それらはみなグループのことを思って、メンバーのことを思っての涙だった。結成2周年記念ライブのアンコールの時に、そんな柳堀が副リーダーへ就任することが発表された。その就任を柳堀に、リーダーの塩釜がお願いしに行くVTRが流されたが、その中で2人が、自分の方が僕青への愛が強いと言い合いながら涙する微笑ましい場面があった。そもそも2人とも自分のことより周りを優先させてしまう優しい人だから、リーダーや副リーダーの役目を果たしながら、自分のことも気にかけていくのは大変に違いない。だが、ほかのメンバーたちはどんどん自分の個性を見つけて磨いていっているから、焦りを感じていたことだろう。だからこそ、塩釜も柳堀も1人のアイドルとしての個性や強みを見つけることを、自分の大きな課題にしてこのツアーに取り組んでいた。そのことは、ツアーパンフレットのインタビューでも語っていたし、ライブを見ていても伝わってきた。柳堀は初期の頃から、歌にもダンスにも彼女らしいなと思う部分があった。それは彼女の性格によるところが大きいだろう。その真っ直ぐで溌剌とした性格だからこそ、それがそのまま歌にもダンスにも感じられたのだ。歌声は大きく、ダンスは丁寧で。しかし、そういう自分の個性にあまり意識的でないような気がずっとしていた。それが、この日のライブでは変わったように思えたのだ。ありのままのらしさに、ぐっと表現力が加わっていた。歌にもダンスにも抑揚やメリハリが出てきて、感情表現豊かにパフォーマンスしていた。本人は当たり前すぎてなんとも思ってないのかもしれないが、涙もろいその感受性は、副リーダーとしても、表現者としても、柳堀花怜の強みなはずだ。

山口結杏
このツアーを通して、山口は須永とともに〝僕青マネージャー〟に扮して、メンバーを面談するというコントを披露してきた。黒縁メガネをかけた山口が、兵庫県出身だけに関西弁を自在に操りながら、ボケた回答をするメンバーに落ち着いた冷静な口調でツッコミを入れていくのが面白かった。SHOWROOM配信などを見ていても、メンバーにここぞというところでツッコミを入れていた山口の面目躍如となる企画となった。ただSHOWROOM配信などでは、めちゃくちゃ明るくて、表情も豊かなのだが、このコントの時は役柄の設定があったとしても、だいぶ緊張していたのか、表情や声が強張っているような、不安そうな、心細そうな印象を受けた。それはパフォーマンスでもそういうところがあったと思う。ツアー前の取材で「人前に立つと緊張して怖くなっちゃうところに、まだ打ち勝てたとは言えない」、そしてそこに「打ち勝ちたいと思って、僕青のオーディションに応募してみた」と話していたことを思い出す。今もまだ打ち勝てたとは言えないのかもしれない。でも、ほかのメンバーもきっと緊張するし、怖さを感じているはずだ。だから、打ち勝つ必要なんてなくて、そんな自分を受け入れてしまえばいい気がする。そして、せっかくステージに立つなら、自分に対するもどかしさを「暗闇の哲学者」のパフォーマンスにぶつけてみたらどうだろう。つらい気持ちを「涙を流そう」のパフォーマンスにぶつけてみたらどうだろう。僕青にはほかにいない正統派美人で、なのに面白くて、170cmというすばらしいスタイルにも恵まれていて、その長い手足を生かして、きっともっと繊細に美しくパフォーマンスできる人だと思っているから。

吉本此那
クールビューティーなルックスとは裏腹に、素顔はとても落ち込みやすく、ちょっとぬけたところもある、お母さんのことが大好きな、かわいらしい人だ。ただし、パフォーマンスに関してはルックス通りのクールビューティーさを発揮する。ユニット曲「臆病なカラス」もそうだが、何よりメインメンバーを務める「真っ白に塗り直せ!」の吉本がそうだ。過去にとらわれず、今、未来に向かって戦へというメッセージ性の強い1曲。その世界観を、華奢な体の彼女が力強くキレッキレのダンスで表現していく。挑発的な鋭い視線の表情もとてもよいのだ。間奏では〝過去〟と〝現在〟の自分が対峙するように、西森と吉本が掴み合うシーンがある。僕青らしいミュージカル的な振り付けで、この曲の大きな見せ場だ。この決闘シーンが緊張感のない弱々しいものになると、曲の世界観が台なしになってしまうが、西森も吉本も抜き差しならない戦いに臨んでいるような迫力を醸し出していた。以前よりもどんどん迫力が増している。それこそツアー初日公演と比べても、吉本自体の印象がだいぶ変わってきた。実際、本人の中でも心境に変化があったことを取材で語っていた。年始にあったツアーに向けた合宿がターニングポイントだったそうだ。合宿でのレッスン中、不安から下を向いてパフォーマンスしていたことを、ダンスボーカルの先生に指摘され、ヤル気がないように見えてしまうから損だし、クールとヤル気がないことを履き違えてないかと、吉本はメンバーたちの前でかなり厳しく指導された。親にも怒られた経験がない吉本はだいぶ落ち込むが、「あれ以上に恥ずかしい出来事はもうない」と思ったら、いろいろあった不安も吹っ切れてしまって、とにかくやるしかないと覚悟が決まったようだ。そもそも、彼女の今年の目標は「闘志」。「真っ白に塗り直せ!」を彼女自身が地で行くような経験をしていたから、あの決闘のシーンの迫力だったのだろう。


(つづく)
撮影=田中健児
取材・文=小畠良一
★ライブスケジュール★
【雲組単独公演 #20】
2025年7月11日(金) 東京都・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE2025年7月17日(木) 愛知県・NAGOYA JAMMIN’
2025年7月18日(金) 大阪府・ESAKA MUSE
【雲組単独公演 #21】
2025年8月21(木) 東京都・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
【アオゾラサマーフェスティバル2025】
2025年8月31日(日) 東京都・豊洲PIT
【超雲組公演 HYPER】
2025年9月27日(土) 東京都・LIQUIDROOM
【僕青祭2025】
2025年10月18日(土) 神奈川県・KT Zepp Yokohama
詳細は>>https://bokuao.com/