葵うたのweb連載【葵色日記】#29 夢の話

今回は夢の話。

一時期は枕元にノートを置いて、起きた時に真っ先に夢の内容を書き留めていた。
夢占いをして考察してみたり。

元来、飽き性の私なので結局それも長くは続かず。
今起きて真っ先にすることといえば、栄養バランスを整える3粒のサプリメントを飲むこと。
これを飲み始めてから、体の調子がなんとなく良い気がしている。

定期的にくる体の不調をきっかけに、一時的に健康オタクになる。
そんな期間が始まると、日々の“まぁ身体に良くないだろうな”という誘惑に手を出さない(暴食などをしないで済んでいる)。
私は本当にめんどくさがりだから1つの習慣を作るのにたくさんの労力が要る。

このままだと最近私がハマっている健康法についてのお話になってしまいそうなので、無理やり切り上げて、夢の話。

たいした話ではないのだけれど、締め切りにあたふたしている時に見た夢なので。
せっかくなので。

下校のチャイム、たくさんの話し声、上履きが床を鳴らす音が入り混じっている。
私はたぶん高校生で、でもその場所は通っていた地元の中学校だった。
風景はセピア色で、何だか回想シーンのよう。

1人で外廊下を渡って下駄箱に向かうと後ろから声を掛けられる。
「お姉ちゃん」。

ここは中高一貫校なのか、妹は中学1年生くらいには幼い。
「これ、私が書いたの」と言って1冊のノートを渡される。

「これはお姉ちゃんのことでもあるし、怒らないでしっかり考えてほしい。これをあげるから早く“返して”」と真剣に言われた。
でも、私は何を“返したら”いいのか分からなくて困ってしまう。

そもそも私に妹はいない。
でもなんとなく「あなたは誰?」と聞いてはいけないことだけは感じていた。

ここで突然叫び声が聞こえる。
声の方を見ると、震えながら手にナイフを持った中腰の男子生徒と、腰を抑えながら壁際に寄り掛かり悶えている男性教師が向かい合っている。

周りは一定の距離を保ち、さっきの叫び声を合図に、一音でも声を出したらいけない緊張感が張り詰めている。
それなのに、妹が男子生徒に突然詰め寄る。

私の妹は正義感に溢れた主人公タイプか。
なら私はあらかた性格の悪い、身内の敵役だろうか。

なんて思っていると、なぜか教師がナイフを持っている。
そして笑いだす。
さっきまでの沈黙が嘘みたいに、その場にいた生徒たちが声を上げて一斉に逃げる。
妹の姿はない。

私は半狂乱の教師と目が合う。
やばい。
踵を返して無我夢中で走る。
こんな時いつも私は判断を間違える。

走った先は行き止まり。
なぜ私なのか。
人はあんなにいたのに。

先生、腰から血がめっちゃ出てますけど。
刺されただけなのに、ゾンビみたいになってますけど。
すると別の教師が助けに来る。

取っ組み合った末、助けに来た教師が脇腹のあたりを刺される。
死んでしまう。

私はその横をすり抜け校舎の外に出る。
妹の視線を感じる。
そっちを見ようとしたところで目が覚めた。

とまぁこんな感じの夢でした。
ちなみにゾンビ化した教師は忍成修吾さん。
勇敢にも助けに来てくれた教師は柄本明さん。
といった配役でした。
妹の顔は思い出せず。

夢の話なんて、寝起きに恋人からされても、その断片的でオチのない話を聞けるのは2、3回。
する方もする方で相手が出してくる“興味ないですオーラ”をキャッチし、特別な夢じゃないと話そうとしないのに……。

それが、こんなところで書いてしまいました。
一応、この話を書いたのには理由があります(写真やお話がないわけじゃない、というと嘘になってしまうのですが……)。

1つ目の理由は、昨日見ていた映画が「ドライブ・マイ・カー」だったから。
2つ目は、姉妹という設定が今読んでいる小説の軸だったから。
3つ目は、この連載のタイトルが「葵色日記」だから。

映画「ドライブ・マイ・カー」の冒頭では、主人公の妻が、夢で見た物語を語り始めるところから始まる。
映画の原作は大好きな短編小説「『女のいない男たち』著者/村上春樹」。

今読んでいる小説は湊かなえ先生の「豆の上で眠る」。
主人公が小学1年生の時、2歳年上の姉が失踪する。
懸命に捜索する日々と、連れ去られなかった自分に課せられた現実。
2年後、その姉が帰ってくるのだが、喜ぶ家族の中で主人公だけが拭いきれない違和感……。

最近読み始めて、今ちょうど姉が帰ってきたところ。
背筋がゾワゾワとして、重い物が溜まっていくミステリー小説。
お姉ちゃんは本物なのだろうか。
今日も帰ってきたら続きを読もうと思います。
本を読み出すと、ふと気付いたら3時間経っていたりするので、安全な家で集中して読むのがベスト。

葵色日記ということで、日記=記録という言葉に甘え、今回は記録を書きました。
夢に妹がまた出てきたら、今度は「あなたは誰?」って聞いてみようと思います。
もしいつか、忍成修吾さんにお会いしたらびびってしまうし、柄本明さんにお会いしたら、心の中で、あ「あの時はありがとうございました、ごめんなさい」と呟くかもしれない。
なんて思います(笑)。

皆さんも、おすすめの本や映画、夢の話があったら聞かせてください。

【毎連載恒例のオススメの本】

「豆の上で眠る」著者/湊かなえ
「女のいない男たち」著者/村上春樹

#30は10月2日(月)の公開予定です。

葵うたの aoi utano
’99・7・4埼玉県出身。蟹座。B型。
俳優・タレント。ドラマ「ガールガンレディ」などの出演経験があり、アニメ「Artiswitch」では主人公の声優を担当。9月27日(水)スタートのドラマ「パリピ孔明」(フジテレビ系)に、アイドルユニット「AZALEA」の「一夏」役で出演する。

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