あえて言おう。欅坂46の実力はまだまだこんなものじゃないと。

 

早くも、か。あるいは、まだ……というべきか。

 

何にしても、欅坂46が「サイレントマジョリティー」でセンセーショナルなデビューを飾ってから、1カ月が過ぎた。CDのみならず、配信においても今なおセールスは伸び続け、MVの再生回数は1200万回を超えるという記録づくしのスタート。もちろん、楽曲の持つメッセージ性やMVのインパクトによるところが大きいのは、あらためて言うまでもない。そして、それらの素晴らしさについては、いたるところで語られているので、ここではあえて触れずにおく。このテキストの主題は彼女たち、すなわち欅坂46というグループの〝知られざる魅力〟である。数カ月前まで〝普通の女の子〟だった彼女たちを継続的に取材してきた中で見えたこと、感じたことを交えつつ、グループが秘めるポテンシャルの高さを浮き彫りにしていこうと思う。

 

思えば、欅坂46の歩みはサプライズ続きだった。オーディションの合格者発表日、それまでグループには「鳥居坂46」という名が冠されていたが、メンバーお披露目の際に突如「欅坂46」と改名したことが明かされる。その約2カ月後、初めてのイベント「お見立て会」では、「ニッポン放送 LIVE EXPO TOKYO 2016 ALL LIVE NIPPON VOL.4」への出演決定が発表された。それから間を置かず、冠番組「欅って、書けない?」(テレビ東京)の収録中に、新メンバー・長濱ねるの加入が告げられ、次いでアンダーグループ「けやき坂46(ひらがなけやき)のメンバー募集も行われるという急展開に。まさしく〝駆け出し〟だった彼女たちは、その都度、驚き、戸惑い、呆然とし……かつ涙を流しながらも、目の前の〝坂〟を懸命に上がってきた。こういった突然すぎる出来事の数々を〝ともに乗り越える〟ことによって、いつしかグループは一体感を強めていく。

 

実際、昨年の11月末にメンバーたちを取材した際、齋藤冬優花と守屋茜は異口同音に「これからもきっと、いろいろなことが起こると思いますけど、メンバー全員で力を合わせて乗り越えていきたいです」と答えている。出身も年齢も個性も見事に異なる彼女たちが、比較的早い段階から運命共同体と思える意識を共有できたのは、等しくグループに掛けられた負荷に耐え、克服してきたことによるところが大きいだろう。その負荷をはね返すだけのポテンシャルはあったにせよ、誰一人気持ちを折ることなく坂を駆け上がれたのは、「メンバー全員で乗り越えることで得る経験値は、必ずグループの血肉になる」という実体験を経てきたことによる。いつだったか、齋藤がブログで「欅坂46のメンバーは本番に強い」と書いていたが、骨太のメンタリティーを有するだけの経験を、短期間にしっかりと積み重ねてきたことは間違いない。

 

当初、その負荷たる存在としてメンバーたちの前に現れた長濱ねるについても触れておきたい。彼女の途中加入にいたる経緯は端折るが、1期生20人にとっては〝青天の霹靂〟であったことは紛れもない。「blt graph. vol.8」(5月16日発売)のインタビューで、鈴本美愉が「初めてグループで一つのことに取り組んで、意識が変わった」と語っているように、それまでどことなく漠然としていたメンバー間の欅坂46に対する帰属意識が強まったタイミングでの新メンバー登場に、彼女たちの心は大きく揺れた。収録スタジオで人目もはばからず涙を流した渡邉理佐は「私たち20人の力ではまだ足りないのかな、と思ったら……悔し涙が出てきました」と後日、その時の胸中を吐露してくれたが、加入する側の長濱の不安も相当なものだったことは想像に難くない。幸いにも、その収録に立ち会うことができたのだが、身を隠す衝立(ついたて)の裏側で出番を待っていた長濱は緊張とプレッシャーから、すでに泣きじゃくり、メークを何度も直すという状態だった。それでも、登場する段になると涙を封印し、そればかりか特技(!?)の一つである〝サル腕(=腕が極端に反る)〟まで披露するという強心臓ぶりを発揮する。

 

と……ここで、一つのことに気がつく。

 

そう、長濱ねるもまたスタートに遅れた分だけ、大きな負荷を掛けられていた、ということに。そして、先を行っていたメンバーたちと同様にそれを克服することで、欅坂46の一員としてのアイデンティティーを確立していったのだ。
もちろん、最初は見えざる軋轢(あつれき)もあった。だが、先述の「欅って、書けない?」初登場回、いったんカメラが止まった際、上村莉菜や小池美波らは長濱の元へ駆け寄り、心細かったであろう彼女を気遣う。やがて、そこに1人、2人と加わり、少しずつ長濱を囲む輪は大きくなっていった。とはいえ、〝新参者〟という意識が拭えないのか、加入してから1カ月ほどは年下の原田葵にも敬語で話すほど、距離をはかっていたのも事実。そんな様子を見かねた尾関梨香は、とある休日に原田と長濱を連れて、東京スカイツリーなど観光名所を訪ねる機会を設ける。
「私も年少メンバーなので、最初のころはみんなに敬語で話していたんです。でも、おりか(=尾関)をはじめとする歳上のメンバーが、『敬語だといつまでも距離が縮まらないよ』って、敬語禁止令を出してきたんですよ。最初は恐る恐るでしたけど……本当に最初だけで、すぐに〝タメ口〟と呼び捨てに慣れちゃいました(笑)。でも、敬語禁止令があったから、メンバーに対して変な遠慮をしなくなったのは、確かです」(原田葵/「graduation 中学卒業2016」インタビュー時に発言)

 

こうして、尾関たちの気配りを機に、長濱も徐々にメンバーたちと打ち解け、今では誰からもグループに不可欠と認められる存在になった。そこに至るまでにも数多のエピソードと物語があるだろうが、それはまた別の機会に……。
何より、声を大にして言いたいのは、誰かにうながされたわけではなく、彼女たち自身が自発的に考えて行動し、グループとしての成長を遂げてきた(もちろん現在進行形である)ことだ。その心意気に、胸を打たれずにはいられない。
彼女たちの円陣の掛け声である「謙虚、優しさ、絆」は、伊達じゃないのだ。

 

「サイレントマジョリティー」のパフォーマンスにおける、センター・平手友梨奈の圧倒的な存在感は、紛れもなく欅坂46の象徴として印象づけられ、リリースから1カ月が経っても新たなファン層を開拓し続けている(平手のすごさについては、blt graph.vol.7の10000字インタビューをご一読ください)。表現の本質たる作品そのものが評価されていることは何よりの強みだが、グループの発足から成長を見続けてきた1人としては、彼女たちの人間味あふれる一面も知ってもらえたら、もっと魅力的に感じられるのではないか……と、拙筆をしたためた次第である。

そして、あえて言おう。欅坂46の実力はまだまだこんなものじゃないと!

 

蛇足だが、欅坂46の足取りに、映画「タイタンズを忘れない」(’00)を重ねてしまうことがある。まだ人種差別の根強かった’70年代初頭のアメリカ・バージニア州に誕生した、白人と黒人の混成高校フットボールチームの躍進を描いた、感動的な物語。最初はバラバラだったチームが少しずつ軋轢(あつれき)を乗り越え、1人の転入生加入によって、さらにチームとしてまとまっていく……という過程を綴っていくのだが(しかも、結束力向上のカギとなるのが、ポップミュージックとダンスだったりする!)、彼らもまた自分たちで考え、行動することで困難を乗り越えていく。事実に基づいたスポーツ映画として純粋に鑑賞するだけでも泣けるが、これから「ひらがなけやき」が加わり、新たなフェイズへと突入する欅坂46の近未来予想図的な見方をしても、なかなかに興味深いことだろう。

 

蛇足ついでに、「サイレントマジョリティー」の12インチ/アナログ盤の限定リリースも勝手にリクエストしておきたい。願わくば、あのアコギのカッティングとクラップをバックに熱唱する彼女たちの歌声を、レコード針と真空管アンプを通した深みのある音質で聴いてみたいものだ。

 

 

text=平田真人