葵うたのweb連載【葵色日記】#49 憂鬱との付き合い方

夏は嫌いじゃないけど、こうも猛暑が続くと、何をするのも億劫で困ります。
最近は自宅での時間が長いので、ダラダラと過ごしてしまいそうなところ、重い腰を上げて、日々の用事を作っています。
特にどこかに出掛けるわけじゃなくて、家の手入れをしたり、映画やドラマを見たり、読書をしたり。
架空の物語に触れて、そこから感じたことを書き出す事も勉強。
派生して、扱っている題材について調べたり、作り手のインタビューを読んだり。
最近は物語だけじゃなくて、現実的な知識もほしくて、図書館で今まで触れてこなかった本を読むこともしています。

それでもやっぱり、他者との会話が減って、家の中にいるだけじゃ、なんだか社会から取り残されている気がして、生きている実感を持てず滅入ってしまうことも。

ひとまず今は、ポカンと空いた時間を、できるだけ有意義に、ポジティブに過ごすことを心掛けています。

この時間があって良かったと思えるような未来が多分あるから、今だけを見て自分の人生を評価しないように。

目まぐるしさに疲れて、そこから少し距離を置いたことで、自分が避けたことの中にあった大切なものに気付けたことは、財産です。

足るを知る。
具体的な実感はなくてもいいから、「上出来上出来」と呟いて毎日眠りにつけるように。

昔から、人に合わせるのが上手だと言われてきたし、自分でもその認識がありました。
初めましての人に、「あなたは飄々と言葉を返すけど、本当のところは腹の中では何考えてるの?」と言われました。
「嘘はついていないし、特にないよ」と笑って答えたのですが、内心は、何て図々しいんだろうと、正直ムカついていました。
でもその言葉は、何年か前に、私が誰かに言った言葉でした。

その時のことを再度反省したし、同時に私は何がほしいのか考えました。
手に入らないことに慣れると、本当に自分がほしいものが何なのか、分からなくなる。
嫌われたくないと、寄り添いたいという自我が両立している。
優しさとも、無責任とも捉えられる。
相手との関係性で構築される人物像だってあるので、人は一言で感情や性格を定義出来ない複雑な生き物だと思う。

何だかんだ考えながら、自分の中にある、弱虫のナルシズムをひしひしと感じました。
多分俳優という仕事をしていく上で、こことはずっと戦っていくのかなと。

こんな風に、自分の中にある濁った部分に目がいきがちですが、楽しいこともたくさんあります!

例えば。
先日オクラを収穫した時のこと。
シンプルに焼いて食べようとしたら、皮が硬くて食べられたものじゃありませんでした。
その時のショックといったら……。
調べると、オクラは花が開いてから1週間以内に収穫しないとタネが大きくなり皮も硬くなって食べられなくなってしまうとのこと。

気分が落ちて、とりあえず散歩しよう、映像撮ってみようとカメラを片手に散歩をした時。
下りられないと思っていた川に近付ける穴場スポットを見つけたり、ワクワクする階段を見つけたり。
流れる水の冷たさや、緑の苔より茶色の苔の方が滑りやすいことを知ったり。
生姜焼きのおいしい喫茶店を見つけたり。

生活の中に散りばめられた新しい発見。
失敗したり、落ち込んでいても一歩外に出ると、ささやかで豊かな感動があることを実感する毎日です。

そんな経験をすると、気付いたら清々しい気持ちになっている。
起きてもいない不安に追われるよりも、少し角度を変えて外を見れば、なんてことない。
どうせネガティブなんだから、無理矢理にでも、軽やかに生きていこうと思います。

【毎連載恒例のオススメの一冊】


「蹴りたい背中」著者/綿矢りさ

葵うたの aoi utano
’99・7・4埼玉県出身。蟹座。B型。
俳優・タレント。ドラマ「ガールガンレディ」、「パリピ孔明」などの出演経験があり、アニメ「Artiswitch」では主人公の声優を担当。長編映画「タイムマシンガール」で主演の星野可子役を演じる。先日最終回を迎え、山田彩花役を演じたドラマ「さっちゃん、僕は。」がNetflixにて配信中。

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