葵うたのweb連載【葵色日記】#57 待ち人からの脱却

今日、久しぶりに下北沢に来た。
昔、住んでいた街。
その頃は比較的静かで、住みやすかったのだが、段々と駅前の開発が進み、祝日に限らず多くの人がごった返すようになった。
東京の生活に慣れてきた頃とはいえ、人混みをかき分けて歩くのには体力がいるし、混み合ったスーパーでは落ち着いて買い物ができない。商品棚を覗いた時に、前にいた他の客に舌打ちでもされたら、その日はどっと暗いものになってしまう。
母にもよく言われるのだが、変なところに神経質になってしまう私が生活するのには、向かない街になってしまった。それから少しして、小田急線沿いの別の街に住み、今はさらに都心から離れたところで生活している。
少し不便でも、心に余裕ができて、今では近所のお宅の名前や家族構成、飼っている犬まで把握し、交流があったりする。
どこか懐かしい暮らしぶりが、肌に馴染んできている。

忙しない街で、見失っていた自分の輪郭が、少し、はっきりしてきた。
それでも、自分の存在を、言葉や行動で魅せていくことの難しさに、ぶち当たっています。

午前中に渋谷近辺でオーディションを終え、夜に忘年会が控えているので運動も兼ねて歩いて下北沢まで来た。
久しぶりに会う人もいるので、とても楽しみ。

新しいことを始める為の機材を買ったり、色々と出費が重なったので、いくつか服を売った。ここの所、買うより売っている方が多い。掃除がとても楽になった。
毛玉だらけでも、思い出のある服は、未だに手放せていないけど。
今度お金に余裕ができたら、竹内まりやさんのベストアルバムが欲しい。
最近の趣味はコンポの前でじっと音楽を聴くこと。
ちょうど、ドラマ「結婚できない男」の主人公のように。
まだ、指揮はしていないけど、多分、恐らくいつかはやり始めると思う。笑

そう、下北沢の話。久しぶりに足を踏み入れてびっくりした。随分と静かになっている。金曜日とはいえ、以前は人で溢れていた道も難なく歩けるし、喫茶店は混み合っていないので、パソコンも気にせず利用できる。

それに、東京の色気に少し心が弾んでいる。
いろいろな街を行き来できる今の生活は、不便の中の贅沢だ。

コロコロと表情を変えるこの街に、気付けば苦手意識は無くなっていた。

さて、あっという間に年の瀬です。
今年はまだやるべきことが沢山あって、日々目まぐるしく動いています。
お仕事については、点が線になっていく感覚が、少し感じられてきたかな。

まだ25歳なのに、予定を忘れて、それに追われることが増えてきたので、最近は,
TO DOリストを紙に書くようにしました。

自室にも祖母の家にあるような大きなカレンダーを置いて、今日の予定を確認。
日付の上には「いつでも前向きに」と達筆な筆文字でプリントされいる。

用があるって、とっても幸せなことで。
これまでスケジュールが空欄な日々があった分、書き込まれた文字が沁みる。

時間が止まってしまった日記も、最近また息を吹き返した。
昨日のページには「選ばなければ、選ばれない」と、一言。

以前はごちゃごちゃに書き込まれた文字も、今はとても白々しくなっている。

その空白を、何で埋めようか。

【毎連載恒例のオススメの一冊】

「スクリーンが待っている」著者/西川美和

葵うたの aoi utano
’99・7・4埼玉県出身。蟹座。B型。
俳優・タレント。ドラマ「ガールガンレディ」、「パリピ孔明」などの出演経験があり、アニメ「Artiswitch」では主人公の声優を担当。主演の星野可子役を演じた長編映画「タイムマシンガール」の公開日が決定。池袋シネマ・ロサにて2025年1月25日(土)から、宇都宮ヒカリ座にて2月7日(金)より公開する。また、山田彩花役を演じたドラマ「さっちゃん、僕は。」がNetflixにて配信中。

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