葵うたのweb連載【葵色日記】#35 年の瀬には忘年会がいる

早いもので師走も中旬に差し掛かりました。
正直、生意気にも「12月はいらない! 早く年を越したい!」と思っていたのですが、ここに来て日々の体感が一番短く、慌ただしい日々です。

清々しく新年を迎えたいから、すぐに解決できそうな問題は解決しておきたいし、身の回りの掃除もしたい。
この時期に友人と話すことといえば、忘年会のことや年末限定で髪色を派手に変えるとか、身体の疲れをリセットする整体のことなど。

ほっとして体調を崩しやすい季節なので、自分の体をしっかり認識して根本解決をしなくちゃ。
先日ご挨拶に行った寒川神社のおみくじにもそう書いてあった。

幼い頃から何かと体が弱く、学生時代は月一で体調を崩して何日も寝たばかりだった。
久しぶりに会った地元の友人にも、「うたは全然学校来てなかったよね」と言われるぐらい、学校という社会にあまり馴染めずにいた。

その時期に何をしていたかなと思い返すと、本を読み漁り(漢字は全然読めず)ひたすらに大好きなドラマを見て、台詞を反復したりするドラマオタクを極めていた(笑)。

私の今の仕事は俳優で、体が仕事道具。
常にベストの状態でいなければいけない。
来年の目標のベースは、恥ずかしながら体調管理だ。

同業の友人とはいつ会っても健康についての情報共有とサウナが必ずセットである。
来年は静かな場所で温泉にゆっくり浸かる、癒し旅行を約束した。

12月の大事なイベントといえば、忘年会。
この文化は日本特有らしい。
今年の苦労を忘れ、労をねぎらう会。
私が20歳以降の数年は、友人との賑やかな飲み会だったこの行事が、年々重要なものになっている。

終電近くの駅のホームには、大学の忘年会だろうか、泥酔した男の子がいた。
そばで女の子が右手で電車時刻を調べ、左手で水と彼のかばんを持ってタジタジしている。
どこか懐かしい気持ちで、「きついよなぁ、がんばれ」と小さくエールを送る。
ただ、お酒は本当に危ないので、飲み方には本当に気を付けてほしい。

少しずつあの日常が戻ってきている。
コロナが急激に流行した頃、大人数での飲み会はできなくなり、それまで頻繁に会っていた友人ともなんとなく距離ができてしまった。

深刻なことだが、人と少し空いた距離感にホッとした自分もいた。
でも、羽目を外したり、人と密に関わることのエネルギーが損なわれてしまった気も、今となっては感じている。
無礼講なんて言葉も、時代とともになくなっていくのだろう。

マナーはもちろん守りつつ、気持ちよく楽しく酔っ払って、普段言えないことも言ってみたい。
泣き上戸も今は懐かしい(笑)。

居酒屋に貼ってあった企業ポスターの「人生には、飲食店がいる」といるフレーズに、しみじみと心動かされた。
良い広告だなぁ。
その日は、友人と3人で集まり、(というのも友人にいろいろあって緊急集合した)愚痴や悩み事、泣き言を聞いて、最後は笑って、「お互いがんばろうな」と解散した良い会だった。

人の気持ちに寄り添い、怒ったり、悲しんだり、ふざけて笑い合ったり。
いつでもそこには飲食店がある。

年を重ねると、出会いと別れが目まぐるしくなって、傷ついたりして、乗り越え方を学び、強がることが増えていく。
そんな時、そばにいてくれる人のありがたみを年々感じる。
私も、何かあった時、会いたいと思ってもらえる良き友人になりたいと思う。

今年は嬉しいことに、お世話になった方や友人に誘われて、忘年会が何件か控えている。
お互いの労をねぎらい、感謝を伝え、時に失礼なことも言っちゃたり。
そんな人間らしい、楽しい会になるだろうと心弾ませながら、残りの1日1日を大切に過ごしたい。

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「君たちはどう生きるか」漫画/羽賀翔一 原作/吉野源三郎
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