続くページのタイトルは「ゆく娘。くる娘。」。モーニング娘。が出演する年末年始の番組の総力特集。当時のモーニング娘。は、’01年にデビューしたミニモニ。の辻ちゃん&加護ちゃん人気が社会現象化していて、アイドル系のイベントはもちろん、学園祭やら忘年会、結婚式の余興まで、「♪加護ちゃ〜んです」と、ミニモニ。のコスプレなどでモノマネをやるのが定番だった。当然、ドラマやバラエティーでもモーニング娘。は引っ張りだこ。「ゆく年、くる年」に引っ掛けた「ゆく娘。くる娘。」は、この年の年末年始のテレビ業界を言い当てた、秀逸なコピーだ。
続くドラマページは、前年「TRICK」（テレビ朝日）でブレイクした仲間由紀恵や、学園ドラマで生徒役を務める水川あさみなどが登場。今や大女優の２人も、初々しさこの上ない。読み物ページでは「NHK紅白歌合戦」の特集が組まれ、初登場の欄には松浦亜弥に、ZONEなんていう懐かしい名前も。そして巻末のグラビアには、’02年のサッカー日韓Ｗ杯を控え、当時アイドルだった平井理央や星野真里、乙葉に、小向美奈子まで、サッカーコスプレのグラビアで自国開催の期待感をあおっている。
取材交渉から編集・執筆まで……雑誌作りの修羅場を経験
まだまだキャリアの浅かった僕が、この号において雑誌作りの修羅場の洗礼を受けたことも少し語っておきたい。僕が「お正月超福袋号」の増ページ特集を仰せつかったのは、原稿の締め切りまで10日余りという頃だった。大好きだった、おニャン子クラブの特集と聞いて胸を躍らせたが、よくよく聞いてみると、おニャン子をベースにグループアイドル史をひもとく、8ページのボリューミーな読み物企画。元おニャン子メンバーを4人、元アイドルを4人、「夕やけニャンニャン」のMCタレントを2人、目玉に、おニャン子の仕掛け人・秋元康氏の、計11人の個別取材を、事務所交渉から取材日&場所の決定、当日のセッティングに、インタビュー、その起こしや執筆まで（カメラマンは別だが）、人手不足により１人で担うこととなったのだ。しかも1人目の取材日がそこから4日後だったことを思うと、11人の物量を1週間で完結させなければいけない計算。初日から泣きそうになった。しかも秋元康氏のスケジュールが出るかも分からない状況。それでも、ようやく最後の1人まで漕ぎ着けたと思った日の朝、そのタレントの取材が突如キャンセルに。血の気が失せた。事務所に泣きつき、「夕ニャン」関連のタレントを用立ててもらい、自宅にまで押しかけて取材……という、嘘みたいなクライマックスに、僕は放心し震えたものだ。その誌面を開くと、今もって背筋が凍るし、涙がにじむ。
おニャン子クラブがきっかけでこの業界に飛び込んだ僕は、おニャン子がいつも人生の節目で大事なものを与えてくれる、と思っている。その意味でも、おニャン子クラブ特集は死出の旅に匹敵する荒行ながら、その後、非常事態に直面しても「あれに比べれば」と思えるのは、まさに財産。この後、お正月号で3年連続、秋元康氏の取材をする縁もでき、その中で秋元氏が、’05年よりスタートする、AKB48の構想を耳打ちしてくれた。それがアイドルシーンに革命を起こす大プロジェクトになろうとは……と、今もって感慨深く思い出す。
text＝田井庸介
