葵うたのweb連載【葵色日記】#81 銭湯のある生活

も、もうすぐ4月に入ります。
家の近所では、梅こそ香り豊かに花を開きましたが、桜はいまだ、ぎゅっとつぼみを閉じ、開花まではもうしばらくかかりそうです。
訪れる春を待って、服装に桜色を忍ばせてみたり。

焦っていても仕方がないので、今できることを、一つ一つ積み重ねていこう。と、意気込んでおります。

そんな中で、ふと、立ち止まれる時間を大切にしています。

手放し、深呼吸して、ゆっくりと散歩する。
お気に入りの小説とコーヒーとおにぎりを持って近くの公園へ。
そこで休日に開催されている草野球を見ながら、お酒を飲むのもいい。
ベンチに寝っ転がって本を読んでいると、散歩中のわんこがそばに来てくれて…
本当に可愛い。

休日の過ごし方で一番のお気に入りは、日中に行く温泉や銭湯です。

一番近い銭湯は、40分ほど歩いたところにあるので、この時期は湯冷めしないように沢山着込んで行きます。

暖簾をくぐって下駄箱に靴を預ける時、
好きな番号とかは特にないのですが、自分の誕生日の数字の7と4が空いていると、少し嬉しい気持ちになります。

番頭さんの「いってらっしゃい」という言葉を受けて女湯に。
平日、開店から一時間ほどたっていると、良い具合に空いているので大体そのくらいに行きます。
不規則な仕事なので、昼間から空いている銭湯はありがたい。

一応シャワーも設置されているけど、私は桶で身体を流すのが好き。
二つの蛇口からそれぞれに出る熱湯と冷水を混ぜるので少し手間だけれど、身体を一気にざばーと流す、あの重みが、たまらんのです。
湯を張って優しく静かに身体を流し、足の指の間まで、日頃の疲れや汚れを丁寧に磨いていく。
最後に、ノズルやシャンプー、洗い場の足元などを綺麗に流し、桶を定位置に立てかける。
自分の事も、次に使う人のことも思いやることが大切で、当たり前のことだけど、そのひと手間だけで、なんだか気持ちがいいものです。

足を流し湯につかると、いつも頭を右往左往している情報や欲みたいなものが、お湯の中に溶けていき、浴槽の底にまで差し込む日の光が、とってもきれい。
なんとも気持ちが清々する。
何も考えずにただただ温かいお湯の中で、ぼーっとするのが至福の時間。
高い天井に「かぽん」と響く桶の音が心地良い。

スーパー銭湯など、塩サウナがあるところもお気に入りです。
最近やっているのは、塩を髪の毛にも揉みこむこと。
塩が溶けて目に入らないようにするのが少し億劫だけれど、そうすると髪の毛が柔らかくなるような気がします。

サウナ室では、たまに目配せをしながら静かに努めようとしている若い二人や、話に花を咲かしているご婦人。母親の様子をたびたび見に来る子供や、そのサウナ室の長のような貫禄のある方など、人数や年齢や性格など、様々な人間関係が渦巻いていて面白い。

湯上りには、休憩スペースで缶ビールを一杯。
貸出している漫画を読むか、テレビを見てぼーっと過ごします。
知らない人と同じテレビを見ているのも面白い。
みんなきっと、この町で生活している人で、地域に根付いたこの場所に私も仲間入りできているのが嬉しい。

仕事で地方に行った時も時間があれば必ずその町の銭湯に行くようにしています。
岐阜で行った先のサウナでは、自分で木をくべて水をかけるロウリュがあって、水風呂の水は地下水なのか飲むようにコップが置かれていたり。
そこに滞在中何日か通って、休憩スペースで販売されていたスイカと地酒を堪能した夏をよく覚えています。
一度定休日に行ってしまい、偶然向かいのご自宅から出てきたその銭湯をいとなむおじいさんに声をかけてもらったことがあって。
ベンチに座って、なんでこの町に来たか、仕事のこと、この銭湯の魅力など、いろいろお話してくれたのも良い思い出。
秋田では脱衣所から長ーい廊下を震えながら歩いて、木の香りがふわっと香る柔らかい温泉にも浸かりました。
そこはすごく広くて、露天の石風呂は深い浅い、熱いぬるいと、様々な種類があり、ずっとここにいたいと思う程でした。
秋田に住むメイクさんに連れて行って頂いた山奥にある旅館の温泉は、本当にトロっとしていて、のぼせそうになったら積もっている雪に寝ころんだりして、最高でした。
帰りに濡れたタオルを二人で振り回して、凍るかチャレンジをしたり。
仕事で出会い、娘のように可愛がってくれました。
秋田には一年を通して毎月通っていたので、みんなで行った思い出のご飯屋さんもあります。
新聞の記事を大切に撮っておいてくれたあのスナックのママさんは、元気にしてるだろうか。
折を見て、また会いに行きたい。

旅先での温泉の思い出には必ず、そこで出会った方との思い出があります。
こうしてふらっと銭湯に来れる幸せや、出会った人と楽しく過ごした時間があるのは、なんという贅沢なんだろう。

なりたい自分や叶えたいことはまだまだ沢山あって、この先どうなるかはわからないけれど、やっぱり人生に銭湯は、温泉は、旅は、必要だと、しみじみと思う。

〈今週の一冊〉

「喋々喃々」著者/小川糸

葵うたの aoi utano
’99・7・4埼玉県出身。蟹座。B型。俳優・タレント。全国順次公開中の映画「時のおと」に出演。また、カバヤ食品の「しゃりinグミ」WEBCMに出演。ほか、出演作は、ドラマ「ガールガンレディ」、「パリピ孔明」、「三人夫婦」、「さっちゃん、僕は。」、映画「僕の中に咲く花火」、「タイムマシンガール」などの作品に出演。

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