※この記事は、「【僕が見たかった青空はここにあるのか?】デビュー2周年記念「アオゾラサマーフェスティバル2025」を通して、僕が感じたこととマネジメントが考えたこと。第1回/第2回/第3回」の続きです。
僕青がデビューした’23年に開催された第65回日本レコード大賞でともに新人賞にノミネートされ、最優秀賞新人賞も受賞したFRUITS ZIPPERは破竹の快進撃で来年2月には東京ドーム公演が予定されている。僕青より後にデビューしたME:IやHANAらはオーディション番組をきっかけに一躍脚光を浴びて人気グループとなった。そういう分かりやすい〝跳ね方〟〝売れ方〟を見せるグループがある一方で、乃木坂46公式ライバルとして大々的にデビューした「僕が見たかった青空」が、周囲からの期待に、分かりやすい結果で答えられているとは、言い難い。率直に、マネジメントの責任者として田村氏に焦りはないのだろうか。
田村「焦りはないです。最初から僕自身は地道に積み上げていくしかないと思っていたので、メンバーの実力も人気も着実に積み上がっていけばいいなって考えているんです。人気をコントロールすることはできないですけど、メンバーの実力は積み上げられる。だから、メンバーとの対話を怠らず、レッスンもずっと続けていきながら、今はメンバーの技術を磨いていくしかない。メンバーは、デビュー前にたくさん訓練を受けたわけでもなく、完成した形でデビューしたわけじゃない。そういう意味で、一気に跳ねるみたいなことは、難しかった部分もあるんです。メンバーも未熟だったし、僕らの計画も良くない点もあったかもしれません。ただ、ここに来てメンバーがどんどん伸びてきているので、このまま積み上げていければと思っています」。

田村氏は僕青にどういう理想を見ているのだろう。
田村「当たり前のことですけど、歌って踊れるアイドルにしたいんです。自分たちの感情を出して歌って踊ってほしいし、実際そうなってきてもいるなと。デビューからずっとそれを課題にしてきましたし、メンバーには『しっかり歌ってしっかり踊りなさい。それが君たちのテーマだよ』と言い続けてきたのが、それがやっと形になってきた気がします」。
僕青関係者によるメンバー評を紹介したコーナー「デビュー2年目の通信簿」がライブ中盤であったが、田村氏によるメンバー評も聞いてみたい。
田村「この子たちはすごいな、ってずっと思っていますよ。ただ、ひとつ要望があるとするなら、本人たちには伝えていますが、『もっと主張してほしい』ということ。でも、それも出てきたのかなって気はします。春のツアーの前だったかな、メンバーに『これからは君たちがやりたいことをやっていかなきゃダメ。もちろんバランスはマネジメントが取らなきゃいけないけど、君たちが手を挙げてやったことをファンは見たいし、大人にやらされていることは別に見たくないと思う。だからもっと君たちがやりたいことや考えていることを教えて』って言ったことがあったんです。それに対して、当初はそこまで音沙汰がなかった。それがだんだんと変わってきたし、今回の『アオゾラサマーフェスティバル2025』でも出てきたんですよね」。


セットリストや演出に関して、メンバーから意見が出てきたことは第1回の記事で書いた。「じゃあ、運営はメンバーのために何をしているんだ」と眉をひそめる読者もいるかもしれないと思い、「運営としてできることは?」と聞いてみた。が、その回答を聞く前に、気になることがあるようで。
田村「〝運営〟って言い方、やめてほしい(笑)。僕青は運営っていう言い方したくないんです。運営っていうと、なんかメンバーと敵対しているようなイメージがするじゃないですか。僕はそれがすごく嫌で、メンバーにも『運営って使わないでほしい』って言っているんです。運営じゃなくて、事務所じゃん、君たちが所属している会社の仲間じゃんって」。

メンバーに対して「所属している会社の仲間じゃん」という言葉があったが、恐らくファンに対しても「仲間じゃん」という思いがあるような気がする。田村氏の目線はいつもフラットだ。メンバーに自主性を求めているのも、青空組と雲組に上下関係はないとメンバーに伝えているのも、センターではなく〝メインメンバー〟と言うようになったのも、同じ考え方が底流にあると思う。僕青にセンターは存在しなくて、全員に役割があって、その曲のメインになるメンバーがいるだけだから、センターという呼称をやめて、メインメンバーという呼び方にしたのは、田村氏の案である。
今一度、〝運営〟あらため事務所としてできることは何かを尋ねた。
田村「これから個人の仕事を増やしていく必要があるのは当然なんですが、とはいえ、メディア仕事には限界があると思っています。僕らがどれだけ営業してもはまらないことはありますから。ディズニーに詳しい安納蒼衣が『サクサクヒムヒム☆推しの降る夜☆』(日本テレビ系)に出演したり、岩本理瑚が(昨年の)『SASUKE』(TBS系)の本戦出場を勝ち取ったり、八木仁愛がダンス甲子園(『第13回全国高等学校ダンス部選手権』)の公式サポーターになったり、そういうことはある意味、必然というか、その仕事にはまるべくしてはまっている。なぜなら、3人とも自分の武器を見つけているという意味で、すでに仕上がっているから。じゃあ僕らマネジメントにできることは、そこまで行くためのプロセスをどう作っていけるかなんです。SNSやYouTubeを使って、いろんな発信や機会を創出してあげることはできるので、メンバーがどういう道に向かっていくのがいいのかをアシストしてあげたい。メンバーに(自分の武器を)気付かせてあげたい。過程の中でどうマネージャーが拾い上げられるかということが大事だと思っています」。
2周年を迎えるタイミングで、メンバーの口からは、〝焦り〟や〝結果〟というフレーズが聞こえてきていた。もちろん、ただ無我夢中に活動しているわけではないし、人間誰しもが不安を抱えながら生きてもいる。
田村「今はそんなこと気にしなくていいですよ。僕らは数字のためだけにこういう仕事をしているわけじゃない。メンバーがライブに来てくださいって呼びかけることより、ライブのクオリティーを上げて、来たいと思ってもらえることのほうが大事なんです。それは、自分の過去の反省もあるんですよ。売上ばかりを気にしていて、その先に得るものってなんだろうって思うこともあるんです。会社員としてはどう考えても失格ですけど(苦笑)」。


マネジメントがそう言ってくれているのだから、メンバーにはこれまで通り、ひたむきにパフォーマンスを磨いていってほしい。すでにほかのグループにはない僕青らしさが出てきているのだから、その独自性を極められるところまで極めていってほしい。
田村「でも、まだまだ主張が足りないんですよ。ほかのグループのファンが見て、僕青ってライブがすごいんだなって感じてもらえるのって、僕らが良いと思うレベルの2倍、3倍やらないといけない。歌もダンスも、もっともっと仕上げていく必要があります」。
ここまで話を聞いてきて、メンバー同様にひたむきというか、愚直にいいグループにしよう、いいパフォーマンスを見せようと取り組んでいる田村氏個人は、僕青のマネジメントとして、どこにやりがいを感じているのだろう。
田村「ライブですね。ライブの2時間のために仕事をしています」。
10月18日(土)、KT Zepp Yokohamaで、ライブ「僕青祭2025」が開催される。卒業する山口結杏が参加する最後のライブとなる。
僕が見たかった青空 アオゾラサマーフェスティバル2025























撮影=田中健児
取材・文=小畠良一
⚫︎PROFILE
乃木坂46の“公式ライバル”として誕生。全国オーディションで応募総数3万5678人の中から選ばれた23人で結成され、’23年8月30日に「青空について考える」でメジャーデビューした。9/23(火・祝)に青空組が出演する「青空組単独公演~それが青春~」(大手町三井ホール)、9/27(土)に雲組が出演する「僕が見たかった青空 超雲組公演 HYPER」(LIQUIDROOM)を開催する。
僕が見たかった青空公式WEBサイト:https://bokuao.com/
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