おはようございます。
今は朝の７：３０。
ある映画の撮影準備で、地方に数日滞在しています。
ホテルの真っ白なサラサラのベッドも良いですが、畳の匂いと、ぺちゃんこの布団が恋しかったりしています。
今月の頭に、連載３周年を記念した「葵の言」というイベントを開催させていただきました。ご来場いただいた皆様、改めて、ありがとうございました。
じっと、原稿やラジオ、映像を見つめてくれている姿、佇まいを見れて、本当に嬉しかったです。トークイベントでは、みんなでお話しできたあの空間が穏やかで、楽しかった！
今まで、自分のことに必死で。世に出た姿や言葉に責任を持っているつもりだったけれど、その先の、それを見てくれている誰かのことを、想いをまっすぐに実感できた事は、私にとって、とても励みになる事でした。
好きなものや人、いわゆる「推し活」が日々の楽しみで栄養剤なので、私も誰かの「推し」になれるように、それから、みんなの楽しみになれるように、作品に携わっていきたいと思います。
贈り物や、お手紙も、ありがとうございました。ぬくぬくです。
まだ四ヶ月ほどありますが、今年を振り返って見ると、今まで水面下で動いていたことが浮上し、広がっていく、耳がじわぁと熱くなる年でした。
特に、例年に比べて、様々な作品に携わらせて頂いた。
その上、どれも違う顔をしているので、なんだか面白い。
今年は、出会いと再会、感謝を実感する一年です。
もう振り返るなんて、気が早いですね。
でも、たまにこう、立ち止まって、俯瞰しないと、すごいスピードで過ぎ去っていく日々に足が絡まりそうで、怖いです。
今日は、地方滞在最終日。
ここで一部、思い出を共有させてください。
今回は、ある町の、最古の磁器「上の畑焼」を体験してきました。
白地に深みのある藍色の模様が特徴的な器。
様々な歴史的背景から一度姿を消した上の畑焼ですが、こうして陶工の方々の手で再び作られるようになり、私も触れさせてもらえる。守られた伝統にこれから出会える楽しみに胸を弾ませながら、町から車を走らせ、山の中へ。
まだ午前中とはいえ、窓から入ってくる風がひんやりと心地良い。
東京は連日の猛暑だというのに、この場所は驚くほど涼しい。昨晩は、羽織を持って来なかったことを悔やむくらいだった。
教室に到着。
中を伺うと、体験客のものだろうか、磁器がびっしりと並んでいる。
奥からメガネをかけた女性の先生が出迎えてくれる。準備をするから少し待っていてくれとのこと。
背伸びをしながら一服がてら入り口の横に行くと、綺麗に手入れをされた庭で、おばあちゃんが背中を丸めてたばこを吸っている。
隣一人分ほど離れて私もしゃがみ込む。
ここの方だろうか、銘柄などはわからないが、なかなかきつそうなタバコを吸われている。
私の祖母は、非喫煙者だったからその姿が新鮮だ。
それにしても綺麗な庭。遠目には芝生に見えていたが、こうして近くで見ると、様々なコケが綺麗に生えて光っている。
「ここは夜涼しいから、夏でもコケが生えるのよ」
ここには他に私しかいないから、私に向けて話しかけてくれたのだろう。
タバコの箱を握りしめたまま、もう片方の手で苔の間に生えた他の植物をぷちっと抜いている。目がいい。こんなびっしりと生えた苔の間からちまっと生えたそれを見つけられる自信は私にはない。
「綺麗ですね」
「もうお盆過ぎたから、お客さん全然なのよ」
それから、なんでこの町に来たのか、とか、色々とお話しをしたけど、興味があるのかないのかわからない返答だったり、のんびりと間の空いた会話が心地良かった。
気づいたらもう準備は済んでいて、おばあちゃんに挨拶をして急いで室内に戻る。
「庭自慢されたでしょ」
と、先生がごめんねぇと言う。
多分きっと親子なのだろう。
畳の上に長テーブル。その上にラップに包まれた１キロの土と、何やら回転しそうな丸い台が置かれている。
この後、手捻りによる粘土からの成形と、既に形作られている器に絵付けをさせて頂く。
さて、先生に習い正座をして（この後直ぐ崩すことになる）、いざ、器作り。
この続きは次の連載で。
【今月の一冊】
葵うたの aoi utano
’99・7・4埼玉県出身。蟹座。B型。俳優・タレント。ドラマ「ガールガンレディ」、「パリピ孔明」、「三人夫婦」、「さっちゃん、僕は。」などの出演経験があり、アニメ「Artiswitch」では主人公の声優を担当。現在放送中の連続ドラマ「ただの恋愛なんかできっこない」(TOKYO MX 毎週水 深1・30〜1・45)では、ヒロインの唯野さくら役を演じているほか、公開中の映画「僕の中に咲く花火」で水石朱里役で出演。また、主演の星野可子役を演じた長編映画「タイムマシンガール」が全国各地で順次公開中。
