2023年2月にプレデビューし、同年7月に本格デビューを果たした雑誌が大好きな船井美玖と宇都宮未来の2人=月刊PAM。2024年1月21日、日曜日。月刊PAMのワンマンライブ「CUSTOMIZE」が、東京・新宿MARZで開催された。【こちら月刊PAM編集部!!】vol.5では、昨年2月のプレデビューライブ、昨年7月の本格デビューライブに続き、“1stワンマンライブ”と位置付けられたこの日の模様をレポートする。
2人が会場入りしてから、約2時間。17時20分を少し過ぎた頃、リハーサルがスタートする。「月刊PAMです! よろしくお願いします!」とステージから会場スタッフに挨拶した2人は、すぐに本番さながらの歌とダンスを見せ、モニターの返りなども確認していく。月刊PAMの「息をする旅」や「letters」の作者であり、ライブではサウンドディクレクションを担当するオガワコウイチが、より歌が映えるマイクの持ち位置などをアドバイスする。メンバーの宇都宮未来からは、ライティングに関する提案もあった。
リハを終えた直後、船井美玖と宇都宮未来に話を聞く。
宇都宮「今日のライブに向けてやることがいっぱいあって、緊張する暇もなかったです(笑)。今日は、今までよりも演出にこだわっている部分があるし、曲の良さ、ニュアンスをしっかりと伝えられるライブにできたら!」
船井「たっぷり9時間、11時40分まで寝てました(笑)。今までのPAMにない楽曲や動きで、新しいPAMを見せられたらと思ってます。特にダンスは、ニュアンスをこれまでとは違う感じにしている部分もあるので、楽しみにしていてもらえたら。その上で、やっぱり楽曲がいいな、なんか動きたくなるなって、そんなライブにできたらいいな」
2人は、そう語って楽屋へと戻った。
開演時刻の19時を少し過ぎた頃、船井による影ナレが聞こえてきた。ライブ中の注意事項を伝えたあと、マイクをオンにしたままで「うわー! 緊張するー! ……頑張るぞー!」と叫ぶ船井。そんな船井の声に、満員のフロアは温かい歓声と拍手で応える。
SEが流れ、場内が暗転する。ステージ上のスクリーンに、レッスン風景や過去のライブ、2人のオフショットなどの映像が流れる。そして映像が終わり、半年ぶりのワンマンライブがスタートした。
ライブの幕開けは、「letters」。ドラマティックなメロディーラインが、サビに向けて熱量を上げていくロックナンバーだ。2曲目は、ホフディランの小宮山雄飛のソロプロジェクト・BANK$のカバー「さいきんぼくは」。そして、一気に会場をハッピーな空気に包んで一体感を生む「スマイルスマイルスマイル」へと続き、4曲目はヤマモトショウが手がけたエレクトロポップ「くゆりゆく」をパフォーマンスする。これまでの定期ツーマンライブやイベント出演で何度も歌ってきた、現時点での月刊PAMの代表的ナンバー4曲を冒頭で立て続けに披露した形だ。
その後、最初のMCを挟み、年明けすぐにリリースした新曲「細胞レベル」を初披露する。タイトでシンプルなビートがポジティブなムードを運んでくるアッパーチューンで、小宮山雄飛が書き下ろしたナンバーだ。同じ2人組ユニットであり、昨年8月の定期ライブ第1回で共演したハチキュウのメンバー・HACHIが担当した振付も、新鮮な印象を受ける。続く「What the PAM?」では、小気味いいハンドクラップで盛り上げつつ、曲調に合わせたどこかコミカルなムーブでキュートさを見せてくれた。
「What the PAM?」を歌い終えると、船井と宇都宮は一旦ステージをあとにする。ステージにスクリーンが降り、2人の声が流れてくる。毎週火曜日の23時30分~24にRCC RADIOでオンエアされている「月刊PAMのラジオ編集会議」の「『CUSTOMIZE』特別編」だ。ライブ前日に収録したというトークで、2人はここまでのセットリストを振り返りつつ、随所で息の合った掛け合いを聴かせていく。「月刊PAMのラジオ編集会議」は、ステージ上とはまた異なる2人の素顔やトークスキルの高さが伝わってくる番組だが、こうしたコンテンツをライブに挟むのも、“雑誌”をコンセプトに活動する月刊PAMならでは。実際の雑誌のように、様々な角度から読者=ファンに面白さ、そして楽しさを提供しようとする2人の心意気が伝わってくる。最後は、次に披露する新曲「遠い部屋」をラジオ内で曲振りし、「月刊PAMのラジオ編集会議」の「『CUSTOMIZE』特別編」は終了した。
ラジオパートでの曲振りの直後、「遠い部屋」のイントロが流れ出し、大人っぽくスタイリッシュな新衣装に身を包んだ2人がステージに姿を現す。「遠い部屋」は、静かな幕開けから徐々にギアを上げていく、オガワコウイチの手によるエモーショナルなナンバーだ。そのオガワコウイチが全作詞作曲とプロデュースを担当する、おやすみホログラムのカバー「colors」と「ニューロマンサー」が「遠い部屋」に続く。メロディーの抜け感が気持ちいい「colors」は、これまでのライブよりもやさしく、やわらかい印象を受けるパフォーマンスだ。そして、曲名を叫んだ瞬間に大きなどよめきが起こり、この日1番と言っていい盛り上がりを見せた「ニューロマンサー」は、カバー曲ではあるがもはや月刊PAMのライブでは鉄板のアンセムと言っていいだろう。エッジのあるサウンドと、疾走しながら高揚していくメロディーがどんどん熱を生み、フロアにエネルギーを渦巻かせていく。間奏で鳴り響く、「オイ! オイ!」のコールも、激しく色合いが変化するライティングに映える。
「ニューロマンサー」の情熱的なパフォーマンスのあとは、この日3曲目の初披露となる「春の夜に月と泳ぐ」が歌われる。やはりオガワによる楽曲で、繊細なメロディーと歌が耳に残る新曲だ。シアトリカルでコンテンポラリーダンス的なアプローチが感じられる振付は、今までの月刊PAMには見られなかったアプローチだろう。これまでは歌唱力や楽曲の良さが評価されてきた月刊PAMだが、今後は「春の夜に月と泳ぐ」で見せた新たなアプローチの身体表現も、自分たちの魅力の1つにしていきたいところだ。そして本編のラストは、月刊PAMの1stシングルであり、プレデビューライブからずっと大切に歌い続けてきた「息をする旅」で締めくくられた。
2人がステージを去ると、再びステージにスクリーンが降りる。そのスクリーン上では、4月に新曲「春の夜に月と泳ぐ/遠い部屋」、5月に1stアルバムをリリースすること、4月27日に船井、7月6日に宇都宮の生誕ライブが開催されること、そして8月には本格デビュー1周年ワンマンライブを東京・渋谷eggmanで行うことを告知。ファンから、大きな歓声が上がった。
告知に続くアンコールでは、もう1度「春の夜に月と泳ぐ」を披露する。本編で披露した時よりも、ややリラックスした表情に見える。続くMCで、「プレデビューから1年、本格デビューから半年のまだまだひよっこなのに、今日はこんなに集まってくれて」と感謝の言葉を口にする宇都宮。船井は、「半年後(のワンマンライブでは)、また格段に成長した姿をお見せします!」と高らかに誓い、この日のライブは幕を閉じた……はずだった。
2人がステージをあとにし、再度降りてきたスクリーンにはレッスンやライブのビラ配り、MV撮影、アーティスト写真撮影といった映像とともに、この日のセットリストやスタッフクレジットがライブのエンドロールとして流れている。しかし、映像が流れ終わっても手拍子とアンコールの声が一向に鳴り止まない。そんなファンの熱気に応え、スクリーンが上がる。そして、2人がステージに登場した。まったく想定しなかったWアンコール。2人にとっては、うれしい誤算だ。想定外のWアンコールで急きょ披露されたのは、「colors」や「ニューロマンサー」と同じく、おやすみホログラムの名曲カバー「Plan」。力強く、どこまでも伸びていくようなメロディーラインと2人の歌声は、熱い思いでWアンコールを求めたファンたちの体と気持ちを確かに揺らしていった。
船井「やっぱり、みんなが楽しんでる顔がうれしかった。自分も緊張ってよりかはうれしい! 楽しい! ってライブがずっとできたんで良かったです!」
宇都宮「いい空気感のライブができたと感じています。このいい空気感で、これからの2024年、月刊PAMはもっと上がっていけるんじゃないかと思いました!」
終演直後、ライブの高揚感がまだまだ残る表情で、2人はそんな言葉を残した。
ライブでしっかりと歌えるアイドルが好きな人。アイドルに限らず、“いい歌”が好きな人。そして何より、“伝わってくる音楽”が好きな人。そんな読者はぜひ、いや絶対に月刊PAMのライブに足を運んでみてほしい。今、そう断言できるぐらいの自信を持ってオススメできるアイドル──それが、月刊PAMだ。
文/大久保和則 写真/篠田直人
【編集後記】私たちも鑑賞させてもらった1stワンマン、まさに雑誌を読んでいるかのような感覚になるライブ構成、最初から最後まで目が離せず、心から楽しい空間であった。ライブ終盤、スクリーンに映し出されたスタッフクレジットにB.L.T.連載チームスタッフの名前を発見。まさか自分たちの名前も出してくれるとは、驚きつつ嬉しかった。当日の関係者スペースには、カメラマンやデザイナー、ヘアメイクなどこれまで関わってきたスタッフが溢れ、それぞれカメラを構えたり、推し曲が流れると身体を揺らしてリズムに乗ったり、親のような気持ちになるのか目を細めて2人を見つめていたり。2人への愛情を感じる光景が印象的で、PAMの2人がこれまで人との繋がりを大事に、関わる全員に対して丁寧に向き合ってきたことの賜物だったと思う。そんな誠実で、頑張り屋さんで、愛嬌たっぷりな愛すべき2人組=月刊PAMを、私たちも連載という側面から引き続き応援していきたい。