16歳にして、芸歴はすでに10年超! 連続ドラマ「コタツがない家」(日本テレビ系)で、深堀順基(作間龍斗)のクラスメート・原木田れいら役で注目を集めた平澤宏々路が、「blt graph. vol.97」に登場。晩秋の夕暮れ時、カメラマンの神藤剛氏とエチュードを織りなすかのようなフォトセッションを繰り広げている。インタビューでは16歳とは思えないほど深慮された考え方をはじめ、彼女の内面に肉迫。その言葉の数々は、思春期ならではの揺れ動く心身と対峙する同世代へ向けたエールとも言える、必読の内容となっている。
B.L.T.Webでは、本誌に収まらなかったインタビューの〝スピンオフ〟をお届け。2023年はレギュラー&ゲストを含めて6本の連続ドラマに出演、話題のアニメーション映画「屋根裏のラジャー」(12/15公開)ではジュリアの声を担当するなど多忙だった1年を平澤に振り返ってもらい、「演じることとは?」というテーマを掘り下げていく。
special interview
──4月から高校生になったと同時に、ドラマ出演が続いた年になりましたね。
「はい、ありがたいことにいろいろな作品に呼んでいただいて。初夏には『DIY‼–どぅー・いっと・ゆあせるふ-』(MBS/TBSほか)の撮影で3週間ほど新潟に滞在したり、振り返ると忙しい1年だったなと思います」
──聞けば、『DIY‼~』のキャスト陣で〝聖地〟巡りをしたそうですね。
「そうなんです。お互いに役名で呼び合いながら、劇中に登場する場所を巡っていって。なので、番宣のイベントの時に『(上村)ひなのちゃん』とか……自分達の名前で呼ぶ方が、かえって違和感がありました(笑)。そんな風に同年代の方々と毎日一緒に過ごすのは初めてだったんですけど、本当に部活の合宿に来ているような感覚で、みなさんと仲良くなれたのが楽しかったです。くれい部長役の森山(晃帆)さんは、今でも『また会いたいね~』って連絡をこまめにくださいますし、まだSNSに上げてない写真もたくさんあるので、Blu-ray&DVD BOX発売タイミングで、SNSに上げられたらなと思っています」
──それと、第5話だけの出演でしたが、「ラストマン -全盲の捜査官-」(TBS系)で福山雅治さんと1対1で織りなしたワンカット長回しのシーンが圧巻だったと話題になりました。
「ありがたいことに、自分が思っていた以上に反響をいただいて。おっしゃったように長回しだったので難しかったんですけど、ご覧になった方々から『あのシーンでグッときた』と言っていただけたことが、自分にとっては自信にもなりました。(平澤が演じた中道)雲母としては淡々と思いを吐露しているだけだったんですけど、それが深く刺さったという声もいただいて……すごくありがたかったです。演じていた時は全集中していたので、大変さや難しさといった感覚は撮った後から実感したんですけど、それほどの集中力を要したシーンだったんだなって今にして感じていますし、全身全霊で演じたお芝居がたくさんの方に届いたことが、何よりもうれしかったです」
──10月期ドラマ「コタツがない家」でもレギュラーでしたが、こちらもそうそうたるキャストでしたね。
「深堀順基くん役の作間(龍斗)さんとの学校でのシーンがメインでしたけど、深堀家にも何度かおじゃまして──。オンエアで見ていたお家のセットに自分もいるのが、不思議な感じでしたね。前々からスタッフさんから、深堀家のセットの写真を見せてもらっていたんですけど、実際に入ってみるとイメージしていた以上に近代的な空間でした。セリフでは『へぇ〜……もっと豪邸かと思ってた』って言わなくちゃいけなくて(笑)。私が演じた(原木田)れいらちゃんは、思ったことをサラッと言葉にしちゃうタイプだと捉えていたんですけど、そのキャラが出ているセリフだなと思いました。でも、わりと日常でも……実際に友達の家に遊びに行って、『あ、何か想像していたのと違った』とか『生活感があって安心するかも』みたいなことを深く考えずに言っちゃうことがあるかもなぁって。そう思うと、意外とリアルなのかなって、台本を読んでいる時から感じていました」
──れいらと順基の関係性も興味深いですよね。序盤の単なるクラスメート同士だった時から、何かいい雰囲気が出ていたと言いますか……。
「1〜2話の台本を読んだ時点で、『えっ、この2人は付き合っていないんだ⁉』って思うくらい親密だったので、どうなっていくのか私自身も楽しみにしていたんですけど……個人的には恋愛感情を抜きにしても何でも言い合える順基との関係性が素敵だな、と感じていて。同性であっても、あんな風にサラッと深い話ができる存在ってなかなかいないと思うので、れいらちゃんが羨ましいです。ドラマの前半で計算でやっていたんだとしたら、れいらちゃんって相当小悪魔なんじゃないか──とも思いましたけど(笑)、監督やプロデューサーさんからは『友達として順基のことを信頼しているからこそ、ちょっといたずらをしちゃった……ぐらいの感じで』と説明されたので、〝ド天然〟もしくは鈍感な子なのかもしれないですね。私としては、れいらちゃんみたいな子が友達にいたら面白いだろうなって思っていて。何でも素直に話してくれるし、感情もストレートに表してくれるので、一緒にいて楽なんじゃないかなって。私自身がちょっと気にしちゃったりするところがあるので、何でもズバッと言ってくれる方がありがたいかなぁって思います」
──興味深いお話ですね。ところで、お芝居をする上で転機になった作品として白石和彌監督の『仮面ライダーBLACK SUN』(Amazon Prime Video)を挙げていましたが、どういった理由からなんでしょうか?
「白石監督の現場は、私にとってはすごく大きな経験になりました。いわゆる子役として活動していた時期は、『大人っぽいね』だったり『しっかりしているね』と言われることにうれしさを感じていたんですけど、『仮面ライダーBLACK SUN』(Amazon Prime Video)の現場では、まず自分の演じる役を深く掘り下げるということ自体が初めてで。しかも、撮りながらどんどん新しい要素が足されていったので、子役から女優になれたと実感できたという感覚があるんです。シーンごとに役としての最適解を常に求められるので、自分の役柄についてちゃんと理解していないと人物像がブレてしまう。そうなると、前後のシーンで雰囲気が全然変わっちゃう恐れもあるので、台本をしっかり読み込んで、(平澤が演じた)和泉葵という女の子がどう思っているのか理解して現場に臨むことの重要性を学ばせてもらったなと感じているんです。実際、お芝居に対するアプローチが〝ライダー〟以降、変わりました。以前はセリフをどう言おうか、どう動こうかということを先に考えて演じていたんですけど、近年はまず役の気持ちや感情だったり、どういうキャラクターなのかを優先して考えた上で、セリフを言ったり動いたりするようになったんです」
──年齢のことを言うのはナンセンスかもしれませんが、16歳=高校1年生らしからぬものの見方だったり、考え方をしていますよね。
「自分の中では、まだまだ何もできていないと思っているので、そのような評価をしていただけるのはすごくうれしいですし、実年齢よりも上に見ていただいていることに若干、安心もしていて。小さい頃からやっているので『まだまだ若々しくて、かわいらしいね』って言われるよりも、ちゃんとお芝居だったり発言で褒めていただくことで、今までやってきたことがちゃんと認めてもらえているのかなって感じます。でも、学校の友達はきっと『え〜っ、宏々路が大人っぽい〜⁉』って言うと思います(笑)。学校では……それこそ年相応の自分として過ごしているので、『安心して宏々路の隣にいられる』と言ってくれる友達もいて。いつかは、役や作品を通じて私のことを知ってくださった方々にも自分の〝素〟を知っていただいて、『そういう一面も好きだよ』と言っていただけるようになれたら素敵だなと考えているんです」
聞くほどに、視座の高い話に感心させられる平澤宏々路が、発売中の「bltgraph.vol.97」では、彼女ならではの等身大な内面を切々と語ってくれている。2024年はさらなる飛躍が期待される、若き実力派女優の素敵な言葉の数々に、ぜひとも触れてみてほしい。
text=平田真人
profile
平澤宏々路 hirasawa kokoro
’07・9・21東京都出身。乙女座。「コタツがない家」(日本テレビ系)の漫画家をめざす高校生・原木田れいら役をはじめ、’23年は6本の連続ドラマにレギュラー、ゲスト出演を果たした。12/15㊎公開のアニメ映画「屋根裏のラジャー」でジュリア役の声を演じる。