
7月に本格デビュー2周年を迎えた、船井美玖と宇都宮未来によるボーカルユニット・月刊PAMが、先日、キャリア初のバンドセットワンマンライブ「MTH.PAM VOL.1『SIGNAL』」を東京・下北沢シャングリラで開催した。もともと、秋元康プロデュースによるガールズバンドプロジェクトであるザ・コインロッカーズでボーカルを務めていた2人だけに、バンドセットでのライブに期待が高まる。
開演前の2人に話を聞くと、「バンドセットになって原曲のイメージがガラッと変わる曲もあれば、原曲に近くても生の音になることで変化を楽しめる曲もあります。どちらのパターンでも、お客さんには楽しい気持ちになってもらえるんじゃないかな」(船井)、「いつもは2人だけだったけど、今回はバンドメンバーのみなさんが一緒にがんばってくれて、本当にありがたかったです。初披露する新曲も、めっちゃ良いですよ!」(宇都宮)という言葉が返ってきた。
開演予定時刻を過ぎ、会場内が暗転する。SEに乗って、まずはバンドメンバーが登場する。2人のギタリストとベーシスト、ドラマーの4人。ギタリストの一人は、PAMの音楽プロデューサーであり、多くの楽曲の作詞作曲編曲を手掛けるオガワコウイチだ。オガワは、今回のバンドマスターでもある。そして、バンドメンバーが待つステージに船井と宇都宮が登場する。フロアからは、大きな歓声が上がった。


ライブのオープニングを飾ったのは、PAMのテーマ曲的なナンバー「What the PAM?」だ。キュートでダンサブルなポップチューンに乗せ、幸せそうな2人の笑顔が弾ける。続く「スマイルスマイルスマイル」では、2人の明るく力強い歌声が光る。曲のラストでは、彼女たちのライブでは定番であるファンと一体となってのジャンプ。そこから、この日最初のMCに。「今日は月刊PAMじゃなくて、MTH.PAM! エムティーエイチドットパムでーす!」と、バンドセット時のスペシャルなグループネームについて触れる宇都宮。運営スタッフも含めて少数精鋭でフットワークが軽いチームだからこその遊び心が感じられるが、「月刊PAMは2人だけど、バックを務めるミュージシャンも含めた“バンド”が“MTH.PAM”」という意味合いも、きっとあるのだろう。MCでは、「(演奏やパフォーマンスの)主張が激しすぎると怒られるかもって悩んでた人!」、「欲しいものリストを公開してる人!」といった独特の言い回しでのバンドメンバー紹介もあり、PAMならではの良い意味でゆるくて、アットホームな空気に会場が包まれていく。






しかし、MCに続いて展開されていった3曲目以降で、そんな空気は一変する。鋭いロックサウンドとシリアスな歌世界が、ヒリヒリとした感情を刺激する「遠い部屋」。どこか内省的な表情を浮かべながら歌いつつ、バンドと共に一気にテンションを上げていった「storyline」。そして、ギアをさらにアップさせ、「オイ! オイ!」というファンのコールを呼び起こす「息をする旅」。立て続けに披露されるロック色の色濃いナンバーたちの熱量は、初めてバンドセットでパフォーマンスすることによって、間違いなくこれまでのライブ以上に高まっている。その熱が爆発したのが、6曲目に披露された「ニューロマンサー」だ。PAMのオリジナルではなくおやすみホログラムのカバーではあるが、結成当初から歌い続けて自分たちならではのパフォーマンスをすることで、“月刊PAMの「ニューロマンサー」”としてライブには欠かせない鉄板曲として育て上げてきた。そんな「ニューロマンサー」の熱量に触発されて、フロアではリフトが発生する。バンドで演奏することでサウンドのエッジが際立ち、よりスリリングな楽曲の魅力がダイレクトに刺さる。特に、印象的なギターのリフがオリジナル音源よりも際立っている印象だ。そして、「まだまだ夏は終わらないですよ!」という船井の声を受けて「summer noize」が披露されると、リフトに加えてサークルモッシュも。その大きな盛り上がりは、ライブ中盤のクライマックスだった。












続くMCでは、「楽しい! バンドセットー! こんなに楽しいんだね! 青春! 未来と2人だけじゃなくて、バンドメンバーも一緒にがんばる! 部活に入った気分だし、仲間ができた気分!」と、初めてのバンドセットライブへの喜びを船井が叫ぶ。そんなMCの後に披露されたのは、「春の夜に月と泳ぐ」。シアトリカルな振付が曲のイメージを増幅させる名曲だが、バンドで演奏することによって音の立体感と奥行きが増し、この楽曲が持つさらなる可能性を感じさせてくれた。続く「くゆりゆく」のイントロが演奏されると、「来た!」というファンの声が聞こえてくる。FRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」で知られるヤマモトショウが作詞作曲編曲を手がけたナンバーだが、オリジナル音源のエレクトロな音像がバンドセットではグルーヴ感を増した印象だ。



そして、続くMCで新曲を初披露することを告げると、フロアが大きな歓声に包まれる。MCで船井が「世界で5本の指に入るぐらいに好きな曲」と語った新曲のタイトルは、「夢のような日々」。ゆったりとした冒頭から、ドラムのカウントをきっかけに一気にスパークする。その瞬間、フロアからはハンドクラップが自然発生する。これまで発表してきた楽曲にはないタイプの疾走感を持った、月刊PAMの新境地だ。「夢のような日々」に続く11曲目は、「ばらばら」。2人の歌の力がダイレクトに響いてくる、エモーショナルなミディアムチューンだ。熱唱を終えて「ありがとうございましたー!」と叫ぶ2人とバンドメンバーに、温かい拍手が送られる。ここでライブはいったん幕を閉じたが、すぐさまアンコールを求める声が会場に響き渡る。その声に応え、再びステージに登場したPAMの2人とバンドメンバーたち。アンコールの楽曲を披露する前のMCでは、バンドセットライブ第2弾開催の可能性に触れつつ、12月5日(金)にデビュー2周年を記念した「月刊PAM 2nd Anniversary LIVE『EVERY SONG, EVERY MOMENT』」を東京・新宿LOFTで開催すること、そのライブではこれまで発表した全曲を披露すること、そして同日に1stフルアルバムをリリースすることを発表した。そんなうれしいニュースに続き、この日のラストナンバーとなる「happy end」が披露される。イントロから徐々に徐々に熱を帯びていきながら、聴く者に圧倒的な高揚感と浮遊感を与えてくれる珠玉のナンバーであり、現在の月刊PAMのライブにおけるアンセムでもある。2025年もおびただしい数のアイドルソングがリリースされたが、間違いなく2025年のベストと言っていい素晴らしい楽曲だ。そんな「happy end」がバンドセットでパフォーマンスされることで、もともとの楽曲が持つロックナンバーとしての魅力がさらに引き出され、2人の歌もいつも以上の輝きを放った。その素晴らしい余韻が残る中、月刊PAMにとって初めてのバンドセットライブはフィナーレを迎えた。


初のバンドセットライブを経た月刊PAMが次に控えているのは、この日のMCでもアナウンスされた12月5日の2周年ライブと1stアルバムのリリースだ。2周年ライブで全曲を披露することはライブ中のMCで触れられたが、1stアルバムには全18曲が“POP Side”のDISC1と“ROCK Side”のDISC2に分けて収録されている。「月刊PAMの未来は明るいです!」、「またここからPAMの物語が始まっていきます!」、「もっともっと面白くなっていくので、未来永劫よろしくお願いします!」──バンドに堂々と渡り合ったライブパフォーマンスはもちろんだが、この日のMCで発せられたそんな言葉たちも、今後のPAMに対する期待を間違いなく高めてくれた。デビューから2年、“夢のような日々”に向けた2人の“息をする旅”は、まだ始まったばかりだ。

取材・文=大久保和則 写真=市川秀明
船井美玖(X/Instagram)と宇都宮未来(X/Instagram)によるガールズユニット。編集部をコンセプトに2023年7月デビュー。圧倒的な歌唱力を武器としたパフォーマンスに定評がある。
12/5(金)、デビュー2周年記念ライブ「月刊PAM 2nd Anniversary LIVE『EVERY SONG, EVERY MOMENT』」を東京・新宿LOFTで開催予定。同日、待望の1stフルアルバムのリリースも控える。リードトラックである「夢のような日々」が11月先行配信予定。