僕が見たかった青空に初めて感じたこと/「僕青祭2025」ライブレポート①

誰もそんな風には感じていないかもしれないが、私の独断と偏見から言わせえもらえば、10月18日にKT Zepp Yokohamaで行われた「僕青祭2025」は、僕が見たかった青空の歩みの中で、画期となるライブになるんじゃないかという気がしている。この2年間、僕青の全ての単独ライブを見てきたが、初めて味わう感覚があったからだ。

昨年と同様に学園祭をテーマにした「僕青祭2025」は、ファッションショーや部活動の発表といった催し物的な企画だったり、曲紹介に繋がるコントも学校設定だったり、それこそ楽曲の1曲1曲は生徒(=メンバー)たちのさまざまなドラマを描いているようにも受け取れて、僕青という学校の学園祭に、遊びに来たような気分になれるライブになっている。

昼夜2部制で行われ、私は1部から観覧した。〝書道部〟の伊藤ゆずが生き生きとした筆使いで「僕青祭」と記す書道パフォーマンスの映像が流れたあと、1曲目の「空色の水しぶき」のイントロが始まった。並べられた机と椅子、さらにノートも使いながら、学園祭が始まる前の教室といった雰囲気で、全メンバー22人がパフォーマンス。幕開けにふさわしい溌剌としてさわやかな姿に目を奪われながらも、「あれ!?」と私は思った。

というのも、これまでになく歌声が大きく、前面に響いてきて、驚いてしまったからだ。そしてそれが、とてもよかった。全員での歌唱は厚みがあるし、ソロや少数でのパートは歌声がマイクに当たる勢いまで感じられるような生々しさがあった。1部2部ともに同様で、会場にいた多くの方がそう感じたのではないか。ハイペースで単独ライブを行っている僕青だけに、メンバーの声量も歌唱力もライブの度に成長が感じられていたが、「いよいよここまで来たか」という感がすごくあった。

音程が不安定になるところもあったが、それを差し引いても歌に力があったし、まだまだ成長できる伸びしろとして受け止めることができた。それこそ、1部の本編ラストを飾った「炭酸のせいじゃない」の合唱は、遠慮なく言わせえもらえば、上手くいってなかった。しかし、そのミスが2部の開演前の円陣でドラマを生み、僕青というグループの良さをあらためて感じさせ、2部の本編も締めくくった同曲の感動的な合唱に繋がっていく。この件は本稿の続きとして別にあらためて書くので、ここではこれくらいで留めておこう。

話をもとに戻す。歌声の成長に驚きながらライブを見ているうちに、また「あれ、どういうことなんだ?」と、すんなりと理解できない妙な感覚に襲われた。歌って踊る姿がいつもと違っているように感じたのだ。

キレがあって美しくまとまりのある僕青の群舞は、それとは相反するようながむしゃらさや、全力でぶつかっている熱い気持ちがにじみ出ていて、その不完全さというか、青春感というか、それが僕青のダンスの魅力のように感じていた。しかし、「僕青祭2025」の1部では、みんながすごく落ち着いてパフォーマンスをしているように見えた。安定したパフォーマンスを無理なくこなしているように感じた。それは成長として良いことであるはずなのだが、僕青のライブを見ていてそんな風に感じたのは初めてのことだから、ちょっと面食らってしまい、良いことなのか、悪いことなのか、よく分からなかった。

そのモヤモヤした気持ちをハッキリさせたくて、私はバックステージを覗きに行った。裏では、なんだかんだあたふたしていたり、緊張に震えていたり、プレッシャーが重くのしかかって下を向いていたりするんじゃないかと思ったからだ。実際、そういう場面をこれまでに何度も見てきたが、この日は違った。にこやかに談笑していたり、写真を撮り合ったりしていた。振りや立ち位置の確認をメンバー同士でしていたりもするのだが、特に焦っているような様子もない。

塩釜菜那「みんな落ち着いていましたよね! みんながみんな、客観的にグループを見ることができるようになっているし、場数を積んできているのもあるのかなって思います。みんなほんとに落ち着いていて、余裕あるなって、私も思いました」。

1部終演後、リーダーの塩釜菜那に、私が感じたことを率直に伝えてみた。僕青の良さだと思っていた全力でぶつかる熱い気持ちよりも、パフォーマンスに安定や落ち着きを感じたこと、それが僕青にとって良いことなのか、悪いことなのか、分からなかったということを。

塩釜「私たちの熱が冷めたとかじゃなくて、きっと自信もついてきたから、そういう風に見えてきたんだと思います。でも、どっちも良さがありますよね。がむしゃらだとほんとに気持ちが伝わるし、安定していて丁寧なパフォーマンスができていたら、曲の世界観が伝わりやすくなるかなって。あと、昼(1部)と夜(2部)でも違うと思うんです」。

実際、2部はまた違う印象を持った。というよりも、1部と同様に歌もダンスもやはり「安定していて丁寧なパフォーマンス」ではあったが、これまで僕青の良さだと思っていた、魅力だと思っていた、熱い気持ちを帯びていた。その違いの大きな要因は、10月末に卒業を控えていた山口結杏が最後の参加となるライブが、この2部だったことだろう。2部の終演後、塩釜が振り返る。

塩釜「(2部は)1曲1曲が、結杏ちゃんと最後でした。普段はあんまり意識していないですけど、一瞬一瞬ってほんとに大事だなって思いました。それってファンの方も同じで、私たちのこの曲のこのパフォーマンスをライブで見るのは最初で最後になるかもしれない。だから、あらためてライブをする立場の人間として、曲の世界観もそうですけど、自分たちが来てくださった方に気持ちを届けるっていうことが、すごく大事だなって思いました」。

ここまでの塩釜とのやり取りを何も聞いていない須永心海に「僕青祭2025」を終えた感想を求めたところ、こういう言葉が返ってきた。

須永「昼は実力で見せる! 夜は感情で伝える!」。

まさにその通りだと思った。さすが僕青が誇るMC担当、短い言葉できっちりまとめてくれた。加えて、なかなかこの言葉が意味深い。メンバー自ら「実力で見せる」と言えるほど、いつの間にかちゃんと自分たちのパフォーマンスに自信を持っていたのだ。そうであるなら、1部を見ていて、落ち着きや安定さを感じたのは、何ら不思議なことではなかった。そして、その「実力」をあからさまに証明して見せたのが、〝ダンス部〟として1部2部ともにメンバー22人全員で披露したダンスパフォーマンスだった。

秋と言えば、中秋の名月ということで、月にちなんだ「竹取物語」をテーマにした物語性のある作品になっていた。22人全員が和装で、扇子や和傘といった小道具を使ったり、障子を使った影絵で見せるダンスを取り入れたりして、華やかに舞い踊った。ダンスパフォーマンスを見せるコーナーはほぼ毎ライブであったが、今回のように大掛かりで、物語性のあるものは初めての挑戦だ。そもそも、メンバー全員でというのは初めてだったんじゃないだろうか。4分にわたるこのダンスパフォーマンスを2日間ほどで仕上げたというのだから驚きだ。

塩釜「振り入れもすっごく早くなってきていて。力はしっかりついてきているなって思います」。

僕青の振付やライブ演出を手掛けるENTANARDのShin.1氏もこう話す。

Shin.1「(「竹取物語」のパフォーマンスは)メンバーにベースがあるからできたことかなと思います。メンバーそれぞれのキャラクターも見えてきて、この人はこの役がハマるなとか想像もしやすくなりました。八木(仁愛)をどう生かそうかなって考えた時に、八木はオリジナルキャラクターの月の使者役(善か悪かは分からない)でしたけど、ああいう登場の仕方をしたら、八木が生きるなとか。ちゃんとメンバー一人ひとりを生かしていきたいし、一人ひとりに生かせる力がついてきたと思うんです」。

早﨑すずきがかぐや姫を、杉浦英恋が帝を、八木がオリジナルキャラクターの月の使者を演じ、メインの役どころを務めた。3人とも表情だけをとっても、すばらしい表現力を発揮していた。早﨑は可憐に、杉浦は凛々しく、八木は凄みを出して、三者三様の魅力をきっちりと見せてくれた。そのほかのメンバーもそうだが、この2年、毎年夏に上演してきた舞台「夏霞」などもあって、表現力がどんどん磨かれている。

僕青の楽曲のダンスは、列になって全員が同じ振りをするようなものではなく、一人ひとりに役割が与えられて、歌詞のある場面をダンスで描くなど演劇的な要素がとても強い。そういう群舞を修練してきた彼女たちが歌わずに、しかも物語をダンスだけで描いた今回の「竹取物語」は、ちょっとほかのアイドルグループでは見ることができないだろうし、再演を期待してしまうほどに僕青の1つの作品として成立していた。これまで彼女たちが培ってきた「実力」をいかんなく発揮していて。

塩釜「私たち、プロっぽくなってきましたか? じゃあ『僕青祭2025』は、花咲く一歩前のライブだと思ってください(笑)」。

冗談めかしてそう言われたが、事実、そんな風に感じた。

撮影=田中健児
取材・文=小畠良一

見逃し配信はこちらから >> abemaPPV

⚫︎PROFILE

乃木坂46の“公式ライバル”として誕生。全国オーディションで応募総数3万5678人の中から選ばれた23人で結成され、’23年8月30日に「青空について考える」でメジャーデビューした。12/17(水)に7枚目シングルのリリース、12/28(日)には’25年のラストライブ「BOKUAO青春納め2025」を控えている。

「BOKUAO青春納め2025」のチケット購入や詳細はこちらから>>公式HP

僕が見たかった青空公式WEBサイト:https://bokuao.com/
公式X:@BOKUAOofficial
公式Instagram:@bokuao_official
公式YouTube:https://www.youtube.com/@BOKUAO_official

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