葵うたのweb連載【葵色日記】#74 10月のきつねと足元のねこ

私は連絡がまめな方ではない。
ポンポンポンっと、テンポよく何度もラリーをするラインが苦手で、特にグループラインに関しては、会話に入るタイミングを完全に失い、考えているうちにその話題が終わってしまう。そんな時は大体、スタンプを一つ打つ。
自分からあまり連絡を取ることもないので、友人からの連絡は「生きてるのー?」か「元気にしとるのか」から始まることが多い。
こんな私でも、電話は基本すぐさまに取る。
そこでの会話はむしろ好きで、気が付けば一時間以上通話していることもしばしばある。
突然都心から離れて、田舎の方に引っ込んだ引きこもり気味で返信も遅い私と仲良くしてくれる友人には、本当に頭が上がらない。

一時期、仕事以外の連絡はメールにしようと考えたこともある。
でもやはりそれは主流ではなく、何より不便。
相手に迷惑がかかるし、連絡をしても気づかれない可能性が高いので、踏みとどまっている。それに、この問題は、そんなことで解決されるわけではないことは、分かっている。

だから決まって最近は、一日のうちに数回、連絡を返す時間を作るようにしている。
その時は集中して、頂いた連絡を一つ一つ返すことだけに集中する。

そうしないと、本を読んでいても、掃除をしていても、とにかく何をしていてもずっと携帯が気になってしまうのだ。

だからなのか、決まって友人と会った時には、「最近何してるの?」と聞かれる。
今月のはじめにチェックしたスケジュール帳はほとんどが空欄で、のんびり過ごそうと思っていたのに、なんだかんだせわしない日々を過ごし、気が付けばもう11月が迫っている。
連載を書いたのもほんの三日前に感じるほどだ。
なんだかキツネにつままれたような気分。

カメラロールを遡ってみても、いかんせん人と会って写真を撮る癖が付いておらず、残っているのは日高屋のラーメンとビール、犬猫、うちで作ったうどんや団子、欲しい本のスクリーンショットぐらいだ。

これだけ見ると、だいぶのんびり過ごしている。

先日は、あるドラマの打ち上げに参加した。
久しぶりに丁寧に髪に櫛を通して、丁寧にメイクをした。

大好きな作品を手掛けていらっしゃる方や、尊敬している方々を前に、とても楽しい時間を過ごした。

それから、今企画中の映画が、実現に向けて一歩踏み出そうとしている。

あいまいな記憶でも、一生懸命に日々を送っていた。
一日に入ってくる情報量が多い、情報過多な現代で、日々の区切りをつけるのが難しいのかもしれない。常に脳みそ起動モードで、寝る間際までせわしなく動き、気が付けば次の日になっている。
お風呂場にまで本や動画を持ち込むのも、やめた方がいいのかもしれない。
下手したら、撮影期間中の方が、ぼーっとしている時間が多いかもしれない。

何日か後に、オーディションも控えているので、美容室に行って髪を整え、すれっからしになったファンデーションを新調しなくては。

今月読むはずだった本が、目の前に積みあがっている。ざっと八冊。
しばらくは、大いに活字を貪り食って、ノートに沢山文字を書きまくろうと思う。
先ほどまでボーっとする時間の大切さを話していたのに、気が付けばすぐに、何かしらの情報をいれようとしている。ため息。
今日はここら辺で連載を終えて、掃除を一通り済ませたら、万年筆を買いに、電車に乗って文房具屋さんに行く。
すっかり食事を忘れてしまいそうだから、まずはお米を炊こうと思う。
私の足元、ヒーターの前、猫が気持ちよさそうに熟睡している。

【今月の一冊】

「平家物語一」著者/木村耕一

葵うたの aoi utano
’99・7・4埼玉県出身。蟹座。B型。俳優・タレント。ドラマ「ガールガンレディ」、「パリピ孔明」、「三人夫婦」、「さっちゃん、僕は。」などの作品に出演。さらに、アニメ「Artiswitch」では主人公の声優を担当。公開中の映画「僕の中に咲く花火」で水石朱里役で出演。また、主演の星野可子役を演じた長編映画「タイムマシンガール」が全国各地で順次公開中。

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