【僕が見たかった青空はここにあるのか?】デビュー2周年記念「アオゾラサマーフェスティバル2025」を通して、僕が感じたこととマネジメントが考えたこと。第3回

※この記事は、「【僕が見たかった青空はここにあるのか?】デビュー2周年記念「アオゾラサマーフェスティバル2025」を通して、僕が感じたこととマネジメントが考えたこと。第1回/第2回」の続きです。

「23人が揃った時のパフォーマンスがめちゃくちゃいいなと思っているから、全員でパフォーマンスした時のパワーって僕青はすごいなと思っているから」と語っていた田村氏。しかし、残念なことに山口が10月末で卒業し、木下が9月末で活動を休止することになり、初期メンバー23人でのライブはこの「アオゾラサマーフェスティバル2025」が最後となってしまった。23人それぞれがそれぞの人生を生きているのだから、同じ方向を向いていられるのはそもそも奇跡のようなことであって、違う道を誰かが歩み出したとしてもそれは必然なのかもしれない。

山口と木下がそれぞれの決断を、メンバーに初めて伝えた日のことを金澤が話してくれた。

金澤「『僕青夏祭り2025』(7月20日、東京・有明GYM-EXで開催)の後に、話があるからってメンバーが部屋に集められたんです。そこで結杏ちゃんがみんなの前に立って『卒業します』っていう話をしました。私もですけど、ほとんどのメンバーが泣いていました。僕青は今まで卒業するメンバーはいなかったから、ほんとにびっくりでした。私は結杏ちゃんと結構お話するので、なんとなく感じ取ってはいたんですけど、はっきり言われてしまって、悲しい気持ちがその時は大きかったです」。

山口からの話が終わると、金澤は真っ先に駆け寄ったそうだ。

金澤「体が勝手に動いて、真っ先に私、結杏ちゃんをギューってしに行っていました(笑)。そしたら、みんなもギューしに来て、全員でギューしながら大号泣していました。でも、花怜が大号泣しながら『でも、もう会えなくなるわけじゃないから〜』ってがんばって話しているのが、ちょっと面白くなっちゃって(笑)、仁愛ちゃんが『その泣き方、やめて(笑)!』ってツッコんでいたりして。そこからはもういつもの僕青の感じで、泣いているけど、笑っているみたいな、優しい雰囲気に包まれました」。

23人で夢を叶えることを掲げてきていただけに、「どうして卒業しちゃうの!」「やめないで!」みたいなことにはならかったのか。

金澤「ならないです。ほんとにみんな、みんなのことが大好きだから、結杏ちゃんのことを応援してあげたいっていう気持ちだったと思います。それに、結杏ちゃんがたくさん悩んで決めたことを分かっているから、『行かないで』とは言えないですよ。それぞれの人生だから、23人っていうことに縛られすぎないで、卒業するメンバーが幸せになってほしいっていう想いがみんな強いと思います」。

木下の活動休止は「アオゾラサマーフェスティバル2025」に向けたレッスン中に聞いたそうだ。

金澤「レッスンのあとに、やっぱりみんなが集められたところで、田村さんから話があって、藍ちゃんからも話してくれました。ほんとに誰も想像してなかったことなので、みんなもう『え!?』っていう感じでびっくりでした。私も『藍ちゃんが!? 藍ちゃんが!?』と思って(笑)。それが『アオゾラサマーフェスティバル』の5日前くらいだったんですよ。だから、そのタイミングで23人でのライブが最後になるっていうことを知って。結構衝撃的でした。『アオゾラサマーフェスティバル』まで『え、もう全然時間ないじゃん』と思って、みんなそこでライブにかける想いが結構変わったのかなと思います」。

田村「23人でずっと活動し続けられたらいいですけど、そうは絶対にならないことは、僕らマネジメントは分かっているわけじゃないですか。でも、メンバーにそれはずっと言わないようにしてきました。メンバーもうっすら気付いていたのかもしれないけど、それでも23人でずっと一緒にいられるって、素直に信じられるところが、(リーダーである)塩釜の良さであり、僕青の良さでもありますよね。だから、今日の涙に繋がったんだと思います」。

アンコールで披露されたデビューシングル「青空について考える」の合唱バージョンでは、きっとその歌詞を噛み締めながら、23人で活動してきたことを噛み締めながら、皆が大粒の涙を流していた。が、セットリストをさかのぼれば、1曲目は全員で、2曲目は青空組が、3曲目は雲組がそれぞれの曲を披露したあと、4曲目の全員曲「マイフレンズ」で、すでに涙を浮かべているメンバーもいた。「ベストフレンズ/永遠にこの絆 忘れない」「マイフレンズ/サヨナラを言う前に/運命よ 本当にありがとう」など、メンバーたちの気持ちに寄り添うような歌詞が歌われていた。同曲のメインメンバーを務める柳堀は、泣き出してはいないものの、ずっと目が潤んでいるように見えて、その歌詞とともにこちらも胸にぐっと来るものがあった。サビ以外のところは、メンバーが2人ずつになって順々に歌っていくのだが、その最後が木下と山口と青木の3人で、グループから離れてしまう2人の間にはさまれていた青木は、パートを歌い終えるか終えないかというところで、赤らんでいく目をたまらず両手で覆った。

田村「最近の僕青のライブは1曲目は全員、2曲目は青空組、3曲目は雲組という流れで、4曲目に『青空について考える』や『好きになりなさい』になることが多いので、違う曲にしようと思って、『マイフレンズ』にしてみたんです。『マイフレンズ』は、全くコールもないし、会場を盛り上げるような曲ではなかったので、演出のし方を変えてみようっていう話をしたら、メンバーからタオルを回したいって意見が出たんです。それで、この機会に盛り上がる曲に消化して『マイフレンズ』をバージョンアップしようと試みました」。

「マイフレンズ」終わりで、この日最初のMCの時間が取られた。一列に並んだメンバーがライブへの意気込みを語っていった。西森杏弥、萩原心花に続き、最後は木下が務めた。繰り返しになるが、木下は9月27日の「超雲組公演 HYPER」には出演するが、23人での全体ライブへの出演は活動休止前、これが最後となる。

横並びに一列に並んでいたメンバーたちの一番端に木下は立っていた。「今日は私たち23人にとっても本当に特別な日となっています。えっと……私たち23人は、今までつらいこととか、悲しいことがあった時も、いつも一緒にいたし、レッスンとかライブとかでも、一緒に23人同じ目標に向かって、ずっと進んできました。でも、今日が23人で、立てる最後のステージです」と客席に向かって話したところで、今度は一列に並ぶメンバーのほうを向いて、あたかも〝最後の挨拶〟でもするかのようにしんみりと語りだす。「ほんとに私のこの決断を、優しく、『がんばってね』とか、応援してくれたメンバーのみんな、ほんとにありがとうございます」と言ってうやうやしく頭を下げたので、「ちょっと待って(笑)!」とメンバーから総ツッコミを受けることに。「まだ(このライブ)終わらないよ! みんな(ファン)、泣くの早いよ! 意気込み! 意気込み! 意気込みを聞かせて(笑)」と塩釜が仕切り直した。

木下「私は本当にファンの皆さんんが大好きで、これからも一所懸命がんばるので、ファンの皆さんに恩返しができるような、そんなライブにしたいと思うし、そんな人生を歩んでいきたいと思います」。

ずば抜けた学力だと聞く木下だが、全くそう感じさせない天然っぽさはこの日も健在。いつもと変わらず〝らしく〟いられる木下の姿を見られて、なんだかほっとした。工藤、八重樫とともに最年少トリオの一人が欠けてしまうのは寂しいが、この日のライブで、八重樫が堂々とした美しい歌声を聴かせてくれたように、工藤が明らかにレベルアップしたキレのあるダンスを見せてくれたように、自分の信じた道を突き進んでいって、成長した姿で僕青に戻ってきてくれることを楽しみにしたい。

デビュー2周年を記念した「アオゾラサマーフェスティバル2025」は、この2年間の成長と想いが詰まったライブだったことは、実際にライブを見ていても、田村氏の話を聞いていても伝わってくるものだった。あらためて田村氏に、マネジメントとしてこの2年間はどんな時間だったのかを聞いてみた。

田村「しんどかったですよね(笑)。こんなに正直に答えていいのか、分からないけど。メンバーもそうだったと思います。やっぱり当初は〝乃木坂46公式ライバル〟っていう冠がついていたから、そことの差ばっかりが目についちゃって、僕青としてやるべきことをちょっと見失っていた時期もあったりしたんです。それがやっぱり2年経って、ライブですごく良さが出てきて。『誰のことを一番 愛してる?』も、あれはもちろんカバーなんですけど、僕青バージョンになったなっていう感じがするんですよ。以前、乃木坂46さんの『制服のマネキン』や『何度目の青空か?』をカバーしましたけど、あの頃はまだ完全にカバーだったと思うんです。でも今は他のアーティスト人の曲も僕青っぽさを出して消化できるようになってきたと思うんです」。

あなたはあなた、私は私──。僕青は僕青の道を進めばいい。

田村「今日のライブを見て、別に乃木坂46さんを追いかける必要もないし、僕青として進むべき道がどこなのかっていうことがようやく分かってきた感じがあるんですよね。僕青のライブの形はどこが最終地点なのかっていうことを、ここからちょっと考えられる時期に来たんじゃないのかなって。要は、ほかのグループとのライブの違いが、今日、ちょっと見えたんじゃないかなって気はします」。

「最終地点」や「違い」を具体的にどういうところに感じたのか。

田村「やっぱり全員でのパフォーマンスをどこまで磨けるかっていうところと、あとは言葉で表現しづらいんですけど、『これが僕青だよな』みたいな形が全体としてちょっとできつつある。それはひとつの言葉で『これが僕青です』っていうものじゃなくて、いろんなことに挑戦して、ダンスもボーカルも必死にやって、で、最後に塩釜が泣くっていうことじゃないですかね(笑)」。

それにもう一つプラスしておきたいことがある。プラスというか、塩釜の涙で話を落とした田村氏の発言そのものがそうなのだが、涙と対のように〝笑い〟が僕青には欠かせない要素になっているだろう。さきほど紹介した柳堀や木下のエピソードしかり、メンバーたちはどこか等しく天然っぽいところがあるし、楽屋はいつもワイワイガヤガヤ笑いが絶えない。また、YouTubeやTikTokでも面白企画をいろいろと展開しているし、ライブでも今回の「デビュー2年目の通信簿」のようなメンバーの短所や黒歴史をあえて公開する企画のほか、メンバーによるコントはもはやおなじみだ。「昇降口」に繋げた伊藤&八重樫によるコントについては第2回の記事で書いた。また、アンコール最後の「初めて好きになった人」では、コントとはちょっと違うかもしれないが、塩釜&須永による〝かき氷早食い対決〟が間奏で謎に繰り広げられ、お祭りムードを盛り上げた。1曲前の「青空について考える」の合唱バージョンで皆が大号泣していたのがウソのように、いやむしろ、それをあえて打ち消しでもするような、大はしゃぎのラストだった。

須永のタンメン修行などの面白企画の立案や、ライブのコント台本を書いているのは、実は田村氏だ。

田村「今回は『昇降口』のコントを本人達、ENTANARDと相談して書いたんですけど、〝かき氷早食い対決〟を考えたのはENTANARDなんですよ。ENTANARDはあんな感じの振り付けをする人たちなのに、コントが好きで『コントやりたい』ってすごく要求してくるんですよね(笑)」。

そう言われてみれば、ENTANARDが手掛ける僕青のダンスは、メンバーが木になったり、橋になったりして、歌詞のあるシーンを描写していくことで、世界観を作り上げていくが、その世界観を作り上げていくという点ではコントに通じるものがあるのかもしれない。

田村「だから、言葉一つで言い表せるようなものはないけど、全体を見渡した時に、これが僕青のライブだなってたぶん感じられるようになってきたと思うんですよね」。

もし僕青を一言で言い表すとしたら、それはやっぱり「青春」であろう。ひたむきさ、努力、夢、挫折、別れ、出会い、涙、笑い……この日のライブで感じられたことを、一つの言葉にするとしてもやっぱり「青春」がふさわしい。ただあえてそれを言い換えるとすれば、「僕青らしさ」となるのかもしれない。

「青空について考える」の合唱で、塩釜の提案によりファンにも一緒に歌ってもらうことになったが、あの合唱の時もそうだし、本編とアンコールの合間にあったファンによる〝ダンスチャレンジ〟なんかも象徴的だったが、僕青のライブは、ああいう一体感が終始生まれているような気がする。ライブ会場が2〜3千人規模で、ステージとファンの距離もまだまだ近いから、なおさらそういう一体感が生まれやすいのかもしれない。そうなると、今しか体感できないものなのだろうか。いや、大きな会場になったとしても感じられる〝僕青らしさ〟なのだろうか──。

「アオゾラサマーフェスティバル2025」は、田村氏いわく「僕青らしさが出たと思います」。であれば、マネジメントとして、その僕青らしさをどう生かして、どうグループをアリーナまで導いていこうと考えているのか。次の最終回はそのあたりのことを語ってもらった。

(つづく)

見逃し配信はこちらから >> abemaPPV

撮影=田中健児
取材・文=小畠良一

⚫︎PROFILE

乃木坂46の“公式ライバル”として誕生。全国オーディションで応募総数3万5678人の中から選ばれた23人で結成され、’23年8月30日に「青空について考える」でメジャーデビューした。

僕が見たかった青空公式WEBサイト:https://bokuao.com/
公式X:@BOKUAOofficial
公式Instagram:@bokuao_official
公式YouTube:https://www.youtube.com/@BOKUAO_official

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次