森高愛の〝愛〟を感じるスペシャルインタビュー「自分自身よりも、大切な人達や大切な存在を優先しているんです」――ドラマ「離婚後夜」

写真=市川秀明

 純粋に人のことを想うから、不器用になる。企業家の子息にして容姿端麗がゆえに打算的に自分に近づいてくる人間達に警戒心を抱いていた大学生・宝条伊織(佐野晶哉)は、バイト先のカフェの常連客で新人小説家の花ヶ咲香帆(久保田紗友)の物静かで奥ゆかしいたたずまいに惹かれ、想いを募らせる。そんな折り、香帆はモラハラ夫・金織真也(長谷川慎)の不倫を知って離婚。その〝後夜〟から始まる恋を描いたドラマ『離婚後夜』(ABC/テレビ朝日ほか)に沼る視聴者が増大中だ。

B.L.T.Webでは同ドラマに香帆の親友・目黒実咲役で出演中の森高愛をフィーチャー! この役のために人生初のショートカットにした気概ある彼女に、作品や役どころについてじっくり語ってもらったほか、自身のことも掘り下げてもらった。特写した美麗なスチールとともに、まさしく〝愛〟を存分に感じてほしい。

写真=市川秀明



『離婚後夜』を見ていて率直に思うのは、金織真也(長谷川慎)がクズを通り越してもはやカスと言えるかもしれないな、ということです(笑)。

「確かに、人としてどうなのかなと思わされるところがありますよね。香帆(久保田紗友)の人の良さに甘えすぎと言いますか」

──そういう意味では恋愛模様にとどまらず、人としての生き方を問う作品でもあるのかな、と感じていて。

「本当におっしゃる通りだと思います。私が演じている目黒実咲もまっすぐな人なので、役ではありながらも『傷ついてほしくないな』という気持ちが自分の中にはありました」。

──森高さんの実咲という役に対する思いの強さは、髪をショートにしたことにも表れていると思います。

「はい、原作のビジュアルに合わせて髪を切らせていただきました。元々、ショートにするかどうかは私の判断に委ねられていたのですが、原作を読ませていただいて『あ……私、髪を切りたいかも』と思ったんです。今まで、ここまで短くしたことがなかったので似合うかどうか分からないという不安な気持ちも(メイン演出の)佐藤快磨監督にお伝えしつつ、たぶん大丈夫だろうという根拠のない自信と美咲に対する思いの強さから、バッサリと短くさせてもらいました」。

写真=市川秀明

──インスタグラム(https://www.instagram.com/ai_moritaka_official/)の投稿を見ていると、反対にロングの時の方が何となく違和感があって……。

「本当ですか? 馴染んでいますか? 周りの友達にも『ショートの方が好き、まである!』みたいなことも言われて、うれしいような、ちょっと寂しいような……複雑な気持ちになったりもしたんですけど(笑)、「似合ってるよ」と言ってもらえることが多いので、短くして良かったなと思っています。TikTok(https://www.tiktok.com/@ai_moritaka)もやっているんですけど、コメント欄で『なんで愛ちゃんは髪を切ったんだろう!?』『お仕事で切ったらしいよ』みたいなやりとりがされていて、結果的に『離婚後夜』にも興味を持っていただいて──。私がお芝居を本業にしていることを最近になって知ってくださったTikTokのフォロワーさんも結構いらっしゃったみたいなので、そういった点でもいい流れをつくれたのかなと思っています」。

──親友である小芝風花さんのお墨付きもいただいて(笑)。

「そうなんです、風花とは高校生の時からの長い付き合いで、いろいろな髪の長さの私のことを知っていて。以前、ミディアムにした時も『このぐらいの長さが一番似合うかもしれへん!』って褒めてくれたんですけど、今回ショートにしたら『好きな長さが更新された』的なことを言ってくれました(笑)。忙しい中でも連絡を取り合って、会える時に会おうという感じで。基本、風花は私を甘やかしてくれるんですよ」。

──それこそ、『離婚後夜』の香帆と実咲のような関係性ですよね。ただ、小島梨里杏さんともめちゃめちゃ仲良しですから、どちらに近いのかは分かりませんが……。

「どちらも近いんですけど、小島梨里杏ちゃんは『烈車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系/2014年)で1年以上ずっと現場をともにした戦友で、言ってみれば家族みたいな感じと言いますか──友達というよりお姉ちゃんのような関係性で。あと、同じ事務所の金井美樹ちゃんとも親しくさせてもらっているんですけど、インスタに登場するのはほぼその3人だっていう……(笑)。でも、そんな風に香帆にとっての実咲のような存在が私にもいてくれるので、今回はすごく自分を投影しやすかったですね。私自身も、自分の大切な人が他人から大切にされていなかったり、傷つくようなことをされるのが一番許せないので、香帆の境遇を自分のことのように怒る実咲の気持ちがすごく理解できたんです。そして、香帆役の久保田紗友ちゃんとも役を超えて仲良くなることができて、この間も一緒にご飯へ行かせていただいて。なので、『離婚後夜』のおかげで同業のお友達が増えました!」。

──久保田さんは年下ですけど、イメージ的に妹という感じでもなさそうな印象があります。

「親友同士の役だったので撮影初日から『何て呼んだらいい?』『私は〝おさゆ〟って呼んでほしい』みたいな会話を交わしたのがきっかけでギュッと距離が縮まって、いろいろな話をするようになったんです。私の好きなK-POPアイドルについて熱く語らせてもらったりもして(笑)。実は撮影で一緒になった期間は5日間ぐらいだったんですけど、3年ぐらい一緒にいたんじゃないかと思うくらい仲良くなれたのが、自分でも不思議だったりします。一見クールな人なのかなと思っていたら、全然そんなことはなくて、人懐っこくて明るく無邪気で……すごく魅力にあふれているんです。私のクランクアップが最終話のラストシーンの撮影で…その時もおさゆを自分の携帯でパシャパシャ写真を撮ったりもしていたんですけど、私のラストカットを撮る時は紗友がすごく優しく微笑みかけてくれたんです。その瞬間、『あぁ、もう終わっちゃうんだ……』っていう寂しさとともに、『私はこの子の手を離したらダメだ!』という謎の母性が働いて(笑)。そのくらい素敵な〝おさゆ〟と出会えたこの作品には、すごく感謝しています」。

──女優さんは役の印象がひとり歩きして、素の本人とのイメージが乖離することも多々ありますよね。それで言うと、森高さんはどんな風に見られることが多いんでしょう? 

「どうなんでしょう……どちらかというと以前はとっつきにくそうな印象があったようなのですが、それこそインスタなどのSNSで見せる素顔だったり、『トッキュウジャー』で演じたトッキュウ5号/カグラの元気で明るいイメージが強くなってからは、少しの間真顔でいただけでスンッとしているように見えるのか、『え……もしかして怒ってる?』と言われることがありました。『え〜っ、ちょっとボーッとしていただけですよ〜』って言うと、すぐに分かってはもらえるんです(笑)」。

写真=市川秀明

──ちなみに、素の森高さんはどういう人だと自己分析されているんでしょうか?

「自分では、〝結構よくしゃべるし、大人数もわりと好きという面もありつつ、オンとオフの高低差が大きい〟という風に捉えていて。家に帰ると『フ〜ッ』って脱力する瞬間があるんですけど、そういうところを外でも不意に見せると、ギャップがあるように見えてしまうのかなと思ったりもしています。ただ、今回の『離婚後夜』で演じさせていただいた目黒実咲は自分と近い部分が多かったので、撮影期間中は家でも〝私+実咲ちゃん〟的な雰囲気が強かったみたいで。家族から『普段の愛よりも明るい気がする』とか『元気だね、最近』ってよく言われていました(笑)」。

──実咲のようにポジティブなキャラクターだと、日常的にも好作用をもたらしてくれそうですね。

「どの役もクランクアップするまでは自分とともに生活している感覚があるんですけど、実咲として過ごした日々は香帆と(比嘉秀海演じる美咲の恋人・大崎)リュウジのことしか考えていなかったので、現場では基本的に〝おさゆ〟と比嘉くんと一緒にいることが多かったですし……無意識ながら実咲に寄り添っていた期間でもあったのかなと、今になって感じています」。

──『離婚後夜』は原作があり、ドラマのために脚色したシナリオがあって、各人物を俳優さん達が立体化していったわけですが、森高さんが実咲を実在させるために心がけたことは、何だったのでしょう?

「今回に関しては、各人物の家族構成や生い立ちといったバックグラウンドが細かく書かれたテキストを、脚本家さんがご用意してくださったんです。そのおかげで役に入りやすかったんですけど、実咲の家庭環境と私の家族がすごく似ていたんです! 裕福というわけではないですけど、何の不自由もなく親に育ててもらったことだったり、弟がいるという家族構成だったり──『えっ、もしかして私の家族のこと……調べました!?』って思うくらいリンクしていたので、役をつくりこむことをせず、『私だったらどうするかな?』という感覚を大切にさせてもらいました」。

──割と最初から実咲とはシンクロ率が高かったというわけですね。

「そうなんです。本当に似ているというか共通項が多かったので、ビックリしてしまって。今まで実咲のようにまっすぐな性格の役を演じたことがあまりなくて、わりと小悪魔だったり、ぶりっ子とか他人を振りまわすような役どころが多かったので、実咲のように人のために自己犠牲的な行動ができる温かみのある子を演じられるのかな、と若干の不安もあったんです。ましてや自分自身に近いところもある役なので、そういう意味では挑戦でもありましたが、結果的には演じやすくて──新たな経験をさせてもらったなと感じています」。

──がっつり芝居として演じるのであれば、自分自身と180度かけ離れている役の方がやりやすかったりしますか?

「どうですかね……。自分の中には人を振りまわしてしまう部分もありますし、大切な人達のことは何が何でも大事にしたいというところもあるので、実咲のような役どころと小悪魔的なキャラクターのどちらも演じられたのかなと思っていて。極端なことを言うと、サイコパスみたいな役をまだ演じたことがないので、『自分にない面を持った役を演じることになった時どうなるんだろう?』というワクワクできる部分があるのかなって、ちょっと楽しみだったりもします」。

──ちょっと本題から逸れるかもしれませんが、夏に伊勢神宮へ行ったことをインスタに投稿していたじゃないですか。何か願掛けをされたのでしょうか……?

「はい、伊勢神宮の近くにある猿田彦神社と佐瑠女神社で芸事のお祭りが催されていたので、りり(小島梨里杏)と行かせてもらいました。『トッキュウジャー』に出ていた2人が揃っていたので、リアルタイムで観てくださっていた世代の方のご家族から『見てました!という声を掛けていただいたり、浴衣を着たお姉さま達と交流させていただいたり、いろいろな人達と触れて温かさを感じたことで、すごく落ち着いて穏やかな気持ちになれたんです。『変に考えすぎていたかもしれない。もっと楽しくやっていこう』って、イイ感じで力が抜けたと言いますか──。その後すぐに『離婚後夜』のお話をいただいて。そういったこともあって、すごく前向きでハッピーな気持ちで現場に臨めました」。

──なんと、『離婚後夜』につながってくるという……! でも、何かのきっかけで視界がパーッと開ける瞬間ってありますよね。

「暑い時期だったので、朝の5時くらいから伊勢神宮周辺をお参りしていたんですけど、日の光を浴びることって大事なんだなと感じました。本来、人が自然と触れてきたものに対して、意識的に触れることによって、〝気〟がみなぎってきたというか……。それこそ気のせいかもしれないんですけど、ちょっとモヤッとしていた心がスッキリして、『まず好きなことから始めてみよう』『できないことはできないとまず伝えてみて、そこから建設的な方法を探ってみよう』といった心持ちになれたんです」。

──役者さんは役の数だけさまざまな人生を生きるから、無意識にいろいろと役から受け取ってしまうこともあるのかもしれませんね──。

「それで言うとMBTI診断ってあるじゃないですか。私、現場が変わるとともに診断結果が変わるんですよ。たぶん思考とか感性が役に引っ張られている部分があるからだと思うんですけど……基本的にはESFJ(領事タイプ)で、たぶん実咲も同じだったような感じがしていて。そこまでは〝実咲のバックグラウンドが細かく書かれた資料〟で触れられていなかったのですが、私と美咲はESFJで共通しているんじゃないかなと、勝手に分析しているんです(笑)。そういえば、おさゆとも初対面の時にお互いのMBTI診断結果のことで盛り上がりました」。

写真=市川秀明
写真=市川秀明

──興味深いお話をたくさん語っていただき、ありがとうございました。最後に、人として大事なことを描いている作品でもある『離婚後夜』にちなみ、森高さんが大事にしていることが何かをお聞かせいただいて締めようかなと思います。

「私は自分自身よりも、大切な人達や大切な存在を優先しているんです。〝私の大切な人が、大切にしていること、もの〟は、私にとってもすごく大切で。たとえば、私の親友がすごく大切にしている猫ちゃんは、私にとっても同じくらい大切な存在です。そこに自分の意志はあるの?と思われるかもしれませんが、それが私の純粋な気持ちでもあるんです。だから、一度心を開いて好きになった人のことは、どうすれば全力で守ることができるのか考えてしまいます」。

──自分よりも愛しい人達のために思いを優先できることって、素敵だなと思います。

「性格もあると思うんですけど、人のために動けないと自分が苦しくなってしまうんです。そこにモヤモヤしちゃうっていう。そう思うと、やっぱり実咲とは似ていたのかなと思いますし、これからも〝自己犠牲〟の気持ちを大切にしていきたいです」。

写真=市川秀明

取材・文/平田真人 写真/市川秀明 ヘアメイク/KANA SAKURAI(HITOME)

Profile

森高愛(もりたか・あい)
1998年1月14日生まれ、埼玉県出身。雑誌モデルを経て、2014年に『烈車戦隊トッキュウジャー』でドラマ初レギュラー。主な出演作はドラマ『三千円の使いかた』、『週末旅の極意~夫婦ってそんな簡単じゃないもの~』、『ジャンヌの裁き』、映画『俺物語!!』、『人狼ゲーム ラヴァーズ』、『ただ、あなたを理解したい』など。
お菓子作りが得意で、「日本アイシングクッキー協会認定講師」資格も持つ。
女優業の他に、TikToker「あいぴょん」としても活動。(@ai_moritaka)
現在は、ドラマ『離婚後夜』(ABCテレビ・テレビ朝日系)に出演中。

森高愛公式X:@ai_moritaka_tc
森高愛公式Instagram:@ai_moritaka_official
ドラマ『離婚後夜』公式HP:https://www.asahi.co.jp/rikonkoya/

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