雨の日に生まれ変わった、強く優しき17枚の葉。秋元康総合プロデュース新グループ「Rain Tree」誕生の瞬間を綴る

 悔しさ、もどかしさ、不安──。彼女たちがこの1年の間に滲ませた涙は数知れず。
 しかし2024年10月8日に感慨や安堵、歓喜によって溢れた涙を、17人はきっと生涯忘れることがないだろう。

 明暗が分かれたのは2023年10月7日、秋元康総合プロデュース「IDOL3.0 PROJECTオーディション」最終審査。合格した11人が「WHITE SCORPION」として華々しくスポットを浴びたことは、改めて言うに及ばず。一方、最後の壁を越えられなかった17人は、研修生的な立ち位置の「FINALIST」として活動を開始、デビューを目指すことに。オーディション時から個々のメンバーを応援し続けるファンの存在に支えられながら、ダンスや歌のレッスンにいそしみ、WHITE SCORPIONとともに握手会やインストアライブ/イベントなどに参加して、経験値を積んできた。夏には17人にとって初めてのオリジナル楽曲「命しか捧げるものがない」(WHITE SCORPION 1stミニアルバム『Caution』に収録)を授かるが、単独デビューへの道すじはまだ見えない。いつしか「過度に期待をするのはやめよう」という、なかば諦めにも似た想いが彼女たちの心の中を浸していく。それでも一縷の望みに懸けて、17人はひたむきに自分達ができることに取り組んだ。気が付けば、〝思い出したくない日〟から1年が過ぎようとしていた。

 東京・恵比寿ガーデンルーム。動画配信サービス「Lemino」で始まる「FINALIST」に密着したドキュメンタリー番組の制作発表とだけ聞かされて会場に姿を見せた17人は、何とも粋でこの上なく素敵なサプライズが用意されていることを知る由もなく、登壇する。

 メンバーの自己紹介が一通り終わると、会場のモニターに最終審査で涙を呑んだ彼女達の映像が映し出される。あの日の記憶と感情がフラッシュバックしたのか、手で顔を覆う者もいれば、隣同士で手をギュッと繋ぐ者たちも。が、2023年10月7日を始点にした日付のデジタル表示が1年後の10月8日で一度止まり、やがて10〜11〜12月と未来の刻をきざんでいくのを目にすると、何人かの勘のいいメンバーは「もしかして……いや、きっとそうだ!」とばかりに、固唾を呑んでモニターを見つめる。

 そして、時は告げられた。

「2025年1月 キングレコードよりメジャーデビュー決定」

 その瞬間、彼女たちがずっと流したかった喜びの涙が、34の瞳から流れ出す。

 グループ名は「Rain Tree(レインツリー)」。雨になると葉を閉じてじっと耐え、日が出るとまた葉を開く実在する植物に由来する。

「その葉に溜まった雫は地面へと溢れ落ち、自らとその下に集まる生命に生きる力を与える。苦難に耐え抜く強さで、自らにも周りにも大きな力を与える、そんな力強く優しい存在になれるように」という想いが込められた名が誇らしく映し出されたモニターを背に、待ち望んでいた瞬間の喜びを分かち合う17人の姿は、ただただ純粋に美しかった。

「まさか……(涙で言葉を詰まらせながら)こういうサプライズをしていただけるとは思っていなかったので、いや、正直ちょっと期待しちゃっていたんですけど(笑)、まさかこんなカタチで初っ端からサプライズしていただけるとは思っていなかったので、あの……素直にうれしいです。がんばりたいと思いま……がんばります。よろしくお願いします」(コトリ)

「今日……みんな、(最終審査に)落ちてから丸1年経って、こういう記者会見という場を設けていただいて、やっぱりみんな『何かあるんじゃないか!?』って期待をしてても、今まで期待して……何も起こらないことが何度もあって……だから、今日も期待しないでおこうと思ったんですけど、こうして来年の1月にデビューさせていただくことが決まって、この1年間、1人も欠けずにみんなでがんばってこられてすごくよかったなって思います。ありがとうございます!」(タマ)

「本当に2人が話してくれたみたいに、今まで……いつになったら私たち目指してたアイドルになれるのかなって、ずっと……ダンスのレッスンも始まっていたけど、あんまりデビューっていうカタチが見えていなかったので、目標が見えない中でがんばらなきゃいけないっていう環境で、みんなでがんばってきて、モチベーションもなかなか保てなかったり、いろいろ悩みもあったんですけど、それで今日を迎えて、あの……(記者発表用の)台本を事前にいただいていたんですけど、デビューっていう話はなかったから、『ああ、やっぱりそうだよな……』みたいな感じで期待しないっていうのが私達の中で出来上がっていたんですけど、なんか急に映像が流れ始めて、今までの私たちの努力している姿とかをドキュメンタリーで流していただいて、〝2025年1月〟って出たときに、なんかもう……震えました。だから、これからより一層努力を重ねていきたいと思います。今日はありがとうございます」(サナ)

「そうですね、この『Rain Tree』っていう名前を最初に聞いたとき、私達のことを見ていてくださったスタッフさんたちが1人ひとりのことをいろいろと考えてつけてくださった名前だなという風に思ったので、あの……木(=レインツリー)の名前も聞いて、すごく素敵な意味がたくさん込められているので、この名前に恥じないような素敵なグループを作っていけたらいいなっていう風に思いました。ありがとうございます」(マキ)

 しかし、新たに取り組み、かつ乗り越えるべき試練が彼女たちには与えられる。デビュー曲、すなわち1stデジタルシングルの表題曲に参加できるのは、歌唱、ダンス、自己表現を鑑みたセレクションによって〝選抜〟されたメンバーのみ。選に漏れたメンバーはカップリング曲に参加するシステムを採用することが告げられると、見る見る17人の顔が曇っていく。

 全員で一緒にデビュー曲をパフォーマンスできない──複雑な思いが彼女たちの胸に湧き起こる。

「まさかセレクション形式になるとは考えていなかったんですけど、全員がこのファーストシングルの表題曲のメンバーになりたいっていう気持ちは変わらないと思うので、私も含め全員がより一層良いものにしていけるんじゃないかなという風に思います」(ペロ)

「デビュー曲は全員で歌えると(涙で声を震わせながら)私は結構信じていたので、少し悲しい部分もあるんですけれども、でもその分、Rain Treeということで、涙の数もみんな増えて、より一層……涙の分だけ強くなるグループだと思うので、みんなでたくさん流した涙の部分、強くなって大きくなって、世の中に元気を与えたりとか、勇気を与えたりとか、みんなに応援してもらえるようなグループを目指していけたらいいなと思います」(マリオ)

「まずはデビューさせていただくこと、ファーストシングルを出させていただくことに感謝の気持ちでいっぱいで、本当にうれしいです。セレクションシステムということで、17人で(表題曲をパフォーマンス)できないということは悲しいこともありますが、でも、17人みんな仲間なので、ここまで1年一緒に来たっていう絆があるので、みんなで一緒に高め合って尊敬し合って、いいグループ──いいRain Treeになれればいいなって思います」(リンリン)

「今日=10月8日にこのように素敵な機会を設けてくださって、そこでデビュー発表させていただいたことがすごくうれしいです。2025年の1月にデビューさせていただくことがすごくうれしいのですが、私もセレクションシステムと聞いて、『17人でデビューする、17人でこれからもがんばっていく』って、ずっと思って活動していたので(涙で声を震わす)、17人全員で楽曲を披露できないというのが、すごく悲しい気持ちでいっぱいです。ですが、この17人でずっと切磋琢磨していくっていうのは変わりがないと思うので、これからもう17人で……表題曲やカップリング曲と分かれてしまってもがんばっていきたいと思っています」(イチゴ)

「ファーストールシングルは17人全員ではできないんですけども、気持ちは17人全員で……やっぱり今まで思ってきた悔しい思いとかも胸にどんどん高め合っていく、そしてずっと仲良く、この1年間も活動してきたので、この仲の良さっていうのが皆さんにも伝わるような、そんな愛があるグループで、皆さんにもこの愛を感じていただけるグループになったらいいなと思ってます」(カワチャン)

「初めに聞いたときはすごく驚いて、正直すごく悲しい気持ちもあるんですけれども……私あんまり競争とか苦手というか、あんまり好きじゃないんですけど……(泣き出してしまう)すみません、みんなで……今まで通り仲良く高め合いながら、がんばりたいなって思います」(チャイ)

 デビューまでの3カ月、この先もきっといろいろなことが起こるだろうことは想像に難くない。晴れる日ばかりじゃない。雨の日もあれば、風の強い日だってある。だが、彼女たちは1年というけっして短くない年月を歩んできたのだ。干からびてしまいそうな酷暑も、吹き飛ばされてしまいそうな暴風も、根腐れしてしまいそうな大雨にも、お互いの手を離すことなく必死に耐えながら。

 それにしても、デビューとグループ名を発表する晴れがましい日が雨というのも、偶然とはいえ何とも運命的にして、出来過ぎではないか。

「雨の日にデビューを発表していただいたRain Treeは、どんな苦難があっても乗り越える、力強く優しい雨となります。そんなグループにします!」(リー) 

 1年前──2023年10月8日の東京の天気は、曇りのち雨。悔しさを噛みしめた17人にとって涙雨だった〝記憶から消したい1日〟は1年後、忘れたくない特別な日になった。この日、朝から降っていた雨は〝17枚の葉〟を経て雫として溢れ落ち、希望の種を萌芽させていた。

写真=Junya.jp
取材・文=平田真人

Rain Tree

 秋元康氏を総合プロデューサーとして迎え、’23年4月からスタートした新たなアイドルを創出するためのプロジェクト「IDOL3.0 PROJECT」。約1万人の応募者の中から、最終合格者11名が「WHITE SCORPION」としてデビュー。最終選考で惜しくも不合格となり、デビューを逃した17名は「FINALIST」として活動を続けてきた。

 悔し涙を流してきた「FINALIST」が、’25年1月に「Rain Tree」としてメジャーデビュー、再出発する。

 WHITE SCORPIONがデビューするその裏で、様々な思いを抱きながら活動してきた彼女たちのリアル、やっと掴んだデビュー、そして、1stシングルセレクションの様子を含めた彼女たちのドキュメンタリー番組「Documentary of another IDOL3.0」が、ドコモ動画配信サービス「Lemino」にて10/18(金)より配信決定。

Rain Tree公式WEBサイト;https://rt-official.jp/
IDOL3.0 PROJECT公式WEBサイト;https://idol3-project.jp/
FINALIST OFFICIAL FANCLUB;https://fc.finalist-official.jp/
公式X:https://x.com/RainTree_RT
公式Instagram:https://www.instagram.com/raintree_rt/
公式YouTube:https://www.youtube.com/@RainTree_RT

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