葵うたのweb連載【葵色日記】#19 桜ととんかつ

いまだに部屋の中はすんと冷えていて、Tシャツの上に厚手のパーカーを着ているというのに、外に出れば桜はすでに葉桜に変わっている。

気持ちと周りの流れのギャップに戸惑う日々です。

戸惑うと言いながら、桜に気付かず、とんかつに夢中ですが。

最近見つけたここのとんかつは、サクサクなのに、口の中が切れなくて最高に美味しい。
お店の雰囲気も、その中にいる人たち(お店の人とお客さん)も、なんかいい。
味と居心地。大事です。

話は戻って去年の桜はどうだったかなと写真アルバムを遡る。

4月3日でこの咲きっぷり。
そして、、なんか若い。

これを書いているのは4月前だというのに、満開の桜を見るにはもう出遅れているのを否めません。
ここ数年、四季のバランスが変わってきている気がする……。

焦るよ焦る。思っているよりも早く進んでしまう季節に。時間に。
あと3ヶ月もしたら、私は24歳になります。

10代の頃に思い描いていた大人にはなれていないけど、22歳の時に感じていた不安は、少し超えているかな。
ここでハナレグミさんの深呼吸を聴きます。

さて、桜について。
ギリギリ駆け込みでお花見をしてきました。

その日は1日お休みだったので、午前中に映画を一本観て、少し散歩して上野公園へ。

駅前の公園で缶ビールとスパークリングワイン(春なのでピンクのロゼと迷ったのですが、飲み慣れていなかったので味優先でセレクト)とベビーチーズを購入。

ビールを飲みながら長い階段を登ると、少し散った桜と思っていた3倍の数の人が。
(梅は満開が、桜は少し散っているくらいが一番綺麗だと思う)

この時お腹がペコペコだったので、桜をチラチラ眺めつつ、公園内の手前に見つけた500円の冷え冷えの焼きそばを購入。
すみっこに生えていた桜の木の幹に腰掛けて、焼きそばを食べました。

外で桜を見ながら食べる焼きそばは、冷え冷えでも美味しい。
紅生姜を最後まで一緒に、バランスを調整しながら食べます。

お花見に来たというのに、気付けば桜より、その下でシートを広げている学生や家族、会社の集まり、お友だち同士の宴会に目がいっていました。

みんなマスクを外し、表情豊かに、お酒を交わしながら会話をしている。
前までは当たり前だったその光景が、何だかとても異質に見えて、未来なのか過去なのか、不思議な感覚でした。

「あぁ、人間の顔ってこんなに種類があるのだなぁ」とか、「あの人はきっとあの人のことが好きなのだなぁ」とか、「あの眉毛は絶対父親譲りだな」とか。
そんなことを思いながら焼きそばを完食し、その場所にも飽きてきたので、座らせてもらった桜の木に心の中でお礼を言って少し歩くことにしました。

上野公園の桜ロードには真ん中に柵が置かれ、右と左で進行方向が決まっているので、流れに乗って歩きます。

桜を見ようにもその流れに乗ることに神経を使ってしまう。
逃げ道はないかと周囲に目をやると、両脇に屋台が立ち並ぶ道を発見。
人は変わらず多いけど、屋台が大好きなので、迷わずそちらに避難します。

東京のお花見はお祭りみたい。
フランクフルトやフルーツ飴、イカ焼きにとうもろこしまで。
それから、熱々の鉄板に山盛りで炒められている、焼きそば。

熱々の焼きそば。さっきと値段は一緒なのに。熱々。なるほど。

今年のお花見は、何だか冒険みたいでした。
急がば回れ。

今年の桜はアルバムに残し損ねてしまいました。
まぁそんな春もあります。
唯一残っているのはこの眼差し。

さあ。新年度、頑張ろう。

「一人称単数」 著者/村上春樹

#20は4月17日(月)の公開予定です。

●PROFILE
葵うたの aoi utano
’99・7・4埼玉県出身。蟹座。B型。
俳優・タレント。ドラマ「ガールガンレディ」などの出演経験があり、アニメ「Artiswitch」では主人公の声優を担当。レバレジーズメディカルケア株式会社「レバウェル看護」のCMに出演中。自身のInstagramでのリール「#あおいのひと頃」が好評配信中。

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