牧野アンナが語るアイドルの現在地(第1回目)

<第1回>

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「原宿駅前ステージ」の振りつけに留まらず、演出並びに原宿駅前パーティーズの育成も手がける振付師の牧野アンナ先生。6月24日に発売された小誌「B.L.T.8月号」の「ふわふわ特集」でお送りした先生へのインタビュー完全版をアップ! 誌面ではふわふわに関わった経緯や、ニューシングル「恋のレッスン」の振りの特徴などを語ってもらいましたが、実は紹介しきれなかった興味深い話題がたっぷりとあったんです! ふわふわを中心に原宿駅前パーティーズ誕生の裏側、素人だった彼女たちが、いかにしてアイドルへと成長していったのかなど、間近で接してきた先生だからこそ語れる秘話が満載です! さらに、AKB48やSKE48の振り付けも担当してきた先生が考える“アイドルとして大事なこと”にまで話は及んでいます。ふわふわファンのみならず、アイドルファン必読の1万字超えインタビューを3回に渡ってお送りします。
ふわふわとの関わりっていうのはどういうきっかけからなんですか?
「『原宿駅前ステージ』を作ることが決まったところから、どんなショーをやって、どんな子たちを出していくかっていう相談をライジングプロダクションの社長から受けて、コンセプトから話し合ったのが最初の関わりですね。それ以前から、ライジングプロのウェイティングの子たちというか、スカウトされたり、オーディションに受かったりした子たちのレッスンは、8年か9年前くらいからやっていたんですよ。A(原駅ステージA)やピンク(ピンクダイヤモンド)の子たちは小学生の頃から見ていた子たちですし。そういう子たちの出る場所がなかったっていうこともあって、『“原宿駅前ステージ”がそういう場所になれば』とも社長はおしゃっていましたね。そういう経緯もあって、当たり前のようにすーっと関わるようになっていきました」。
ふわふわのような、“ザ・アイドル”をライジングプロが手がけるっていうことに少なからず驚きがありました。
「最初はそこまでアイドルを手がけようっていうことより、まずは、今レッスンしている子たちをステージに出して、ショーを毎日やるっていう話だったんです。でも、そんなに人数も多くいたわけではなかったので、『その子たちだけで1時間半のショーは難しいし、毎日やるとなると人数やチームを増やして、ローテーションが組めるようにもしていったほうがいいんじゃないですか?』っていう話を社長にしたら、『じゃあ、オーディションをしようか』っていうことになったんですよね」。
そのオーディションは、一般募集をしていました?
「いえ、新たにスカウトしてきた子たちでオーディションをして。そのとき、『明日、オーディションがあるから、ちょっと来て』と言われて、パッと私は行ったんです(笑)。でも、まだなんのコンセプトも決まっていなかったので、ただみんなが歩いてきて、自己紹介をするみたいなオーディションで、こちら側も何をどう取るかが定まっていなかったから、社長もたぶん誰を選んでいいのかわからなかったと思うんです(笑)。それで『ちょっと踊らせてみましょう』とかって私のほうから提案したりして。バンバン踊れる子をこっちに集めて、まったく踊れない子をこっちに集めて、やたら身長が高い子もちらほらいたので、165cm以上の子はこっちに集めて、みたいな感じでチームを分けていったんですよ。で、社長に『踊れる子たちがいるから、それで1つグループがあってもいいんじゃないですか?』『身長の高い子たちでモデルのようなグループが1つできそうじゃないですか?』って言ったら、『いいんじゃないかな』みたいな。それが原駅ステージAであり、原宿乙女の原型ですね。あと、(ふわふわの岩崎)春果や(吉澤)瑠莉花、(中野)あいみ、(平塚)日菜とかも私のレッスンを受けていた子たちで、その子たちを中心に“ザ・アイドル”みたいなチームもあっていいんじゃないですかって言ったんですよ。その“ザ・アイドル”のチームは『ちょっと人数多めにしませんか』っていう話もしたりして」。
『原宿駅前パーティーズ』をすごく手探りで作っていった感じなんですね。
「そうですね。そのオーディションのあと、それぞれチームのカラーにあった曲をありものの曲で1回決めて、振りを作ってみて、社長にプレゼンしたんです。そしたら、社長がやっぱり全部オリジナルでいきたいと。社長もたぶん、だんだんといろんなことが見えてきて、そういう判断をしたと思うんです。ありものの曲で作っていたショーを1回なしにして、全部オリジナルでもう1回振りつけ直して、衣装のコンセプトもそこからまた考えていくっていう感じでした。だから、去年の8月に『原宿駅前ステージ』はオープンしましたけど、最初は去年の3月を予定していたのが、4月になり、5月になり、6月になりって、どんどん遅れていっちゃいましたね(苦笑)。歌とダンスにこだわったチームをライジングはプライドを持ってこれまでやってきたのが、まだ何もない状態の子たちを世に出して、そこからファンと一緒に育てていくっていう、いわゆる今のアイドルのコンセプトみたいなものを手がけるのは初めてなんですよね。だから、社長がすごい戸惑っていたのが“とてもじゃないけど、こんなのステージで見せられない!”みたいなところで。まあ、今でもそんなに踊れないですけど(笑)。ほんとに最初の頃はみんな手と足が一緒に出ちゃうくらいでしたね。普通の生活をしていた子が突然、歌とダンスに挑戦しているので、全然踊れないし、形にならないのはしょうがないんですけど。今はだんだん動きを増やしていますが、最初の頃はポーズだけ取らせていた感じでしたからね。社長はたぶん、すごい葛藤があったと思います」。
ふわふわのような“ザ・アイドル”は、特にライジングプロの中では異色のグループですよね。
「はい。ふわふわは完全にファンの人たちに楽しんでもらうグループというか、振り付けの中に“じゃんけん”や“あっち向いてホイ”など、ファンの方と一緒にできる遊びを取り入れたから、社長的には最初はたぶん抵抗があったと思います(笑)。でも、とりあえずやってみましょう! って私のほうで押していきました。客席とあれだけ距離が近いランウェイ付きのステージなんだから、そこだからこそできる振り付けにする必要があると思ったので」。
結成当初のふわふわメンバーはどんな子たちでしたか?
「ある程度レッスンを受けていた子と、スカウトされてすぐに振りを覚えて1週間後にステージに立つような子もいて、いわゆる芸能をやっていく上での最低限のルールを知っている子もいれば、そうじゃない子たちもいっぱいいて。踊りが云々という前に、そこをまず教育していくことが大変でしたね。たいした理由でもないのに、平気でレッスンを休みますって言い出したりするから、これは遊びじゃないし、部活じゃないし、お仕事なんだよっていうところを教えないといけなくて。たぶん『原宿駅前ステージ』でこれから公演をしていくっていうことが、後々何につながっていくのかが、みんなまだ子どもで理解できてなかったんですよね。なんとなく部活みたいに、レッスンの一環としてステージで踊って帰るくらいの意識しかなくて。でも、事務所的にはちゃんとCDデビューを想定しているし、いつの日か日本武道館とか大きなステージでもライブができるまでに育てたいと思っての“ここ、だからね!”っていうところを理解させていく必要がありました」。
そこを理解できている子もいれば、そうじゃない子もいて、メンバー同士で意識の違いからぶつかることはなかったんですか?
「お互いに苛立ちはあったでしょうね。練習量が足りないからもっとがんばらなきゃって自覚している子たちは、みんなで集まって自主練をしようってなるし、その一方で、事務所で決められたレッスンにはちゃんと参加しているんだから自主練はちょっと……ほかにやることがあるのでって子もいて、メンバー間で行き違いが最初の頃はあったと思います。でも、ステージを繰り返しやっていく中で、ファンの人たちも増えてきて、だんだん自分たちが置かれている立場を理解できてくると、もっとちゃんとやらなきゃっていうふうに変わっていきましたね」。
ふわふわ2枚目となるニューシングル「恋のレッスン」のMV撮影前日にも全員で自主練していたそうです。
「今はもうほったらかしにしていても、自分たちで考えて練習していますね。それに、休演メンバーがちょこちょこ出てくるんですけど、その都度、その子の位置を誰かが埋めなきゃいけないじゃないですか。毎回私が公演に行けるわけではないので、“この歌パートは誰で、ここの立ち位置はこうやって”っていうのも今は自分たちで仕切ってやっていますね」。
初期のふわふわを引っ張っていたメンバーっていうと誰かいましたか?
「リーダーを自分たちで話し合って決めさせたんですよ。それで初期の頃は(塚本)凪沙と(山本)七聖の2人がリーダーを務めていました。ただ、凪沙が乙女と兼任になったので、今は(赤坂)星南がリーダーをやっていて、それを補助しているのが七聖です。振り付けに関しては七聖が一番しっかり覚えているし、理解しているし、新しく来た歌詞や、私が作った立ち位置表なんかも写メを撮って、だいたい七聖がLINEでみんなに回すんです。私、振りをつけたらすぐ忘れちゃうんですけど(笑)、『この振りつけどうなっていたっけ?』って七聖に確認すれば、まず間違いないですね」。
リーダーを自分たちで決めさせたことには何か理由があるんですか?
「あれだけ人数がいると、みんが集合しているのかどうかを確認するとか、何か始まるときに声がけをするとか、何か注意をするとかってときに、先生じゃなくてメンバー内で軸になる人がいないと、まとまらないんですよね。すべてが見えてこないというか、私たちスタッフに対してはいい顔をしているけど、メンバーだけになったときにいろんなことが起こってくるものなので、責任をもってみんなをまとめていく人間がメンバーの中にいないと、大所帯の女の子のグループって成立しないんですよ。ただ、こっちサイドが見ていい子だと思っている子と、メンバーの中で信頼がある子は違うので、自分たちで決めなさいって言いました。自分たちで選んだリーダーなんだから、気に入らなくても責任持ってねって(笑)」。

 

 

(次回に続く)

 

●PROFILE

牧野アンナ(まきの あんな)

’71・12・4東京都出身。

沖縄アクターズスクールでチーフインストラクターを務めた後、’08年より振付師として活動。AKB48の「ヘビーローテーション」をはじめ、数々の振付を手がけてきた。

 

text=小畠良一

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