情動を掻き立てられ続けた1年。欅坂46の記念日に捧ぐ

欅坂46の魅力って、何だろう?
なぜ、これほど多くの人やメディアが彼女たちに惹きつけられ、語りたがるのか。
今さらなのだが、このところずっとそれを考えていた。
と書いておきながら、考えるだけ不毛だろうなと思っていたりもする。
なぜなら、明確な正解なんてないからだ。
裏を返せば、語る人の数だけ文脈や切り口が存在する、ということでもある。
「アイドルのイメージを覆すパフォーマンス」「全員が渾身の力で体現する楽曲の世界観」「権威への抵抗や、ひとまとめにされることを拒否する歌詞への共感」といったダイレクトな見方から、「楽曲を視覚化してアートに昇華させる集団」「まるで映画のようなストーリー性のあるグループ」「パンクのアティチュード(心構えや姿勢)を持ち合わせた反逆的アイドル」といったカルチャー論的な深読みまで、語り口は実にさまざま。何にしても、触れた者の感情や心情、文化面におけるバックグラウンドを投影したくなる強い引力を宿していることは、紛れもないだろう。

かくいう筆者は……結成当初の、まだ何者でもなかった彼女たちが幾多の壁を乗り越えて、連帯感を強めつつ〝表現者〟へと進化していく過程を取材者として見守るうち、すっかり没入してしまったクチだ。スポーツの番記者が、担当チームを取材する中で愛着を抱いていく感覚に似ているのかもしれない。もちろん、客観性をもって記事を書くことを心がけているが……親目線というとおこがましいけれども、ドラマティックな舞台裏も目にしてきただけに、支援したいという気持ちが多かれ少なかれ滲んでしまっているのは否めない。

その是非はともかく、個人的に惹かれてやまないのは、「欅坂46というグループの紡ぐ物語が、それこそスポーツ競技のごとく筋書きのないドラマに満ちている」ことだ。出身地も育った環境も異なる32人が数奇な縁によって出逢い、少しずつお互いを理解して心を通い合わせながら、運命共同体として困難に挑んでいく……という青写真は当初からあったにしても、想定をはるかに超えたチャレンジ&サクセスを体現し続けていることに、魂を揺さぶられずにはいられない。ちょっと乱暴な例えかもしれないが、ワールドカップ本大会に出場するだけではなく、勝利することへの期待も背負った(もはや勝つことが当然とされている感さえある)サッカー日本代表チームの歩みとダブるものもある。AKB48が突破口を開き、SKE48やNMB48、HKT48らがその穴を広げ、さらに乃木坂46が新たな風を吹き込んだ段階での、デビュー。すなわち成功を義務化された欅坂46のプレッシャーたるや、想像以上に凄まじかったはずだ。ましてや、メンバーのひとりひとりは〝生きることに不器用〟で、ともすれば心もとなく映ることを考えれば、なおさらのことだろう──。

しかし、だからこそチームとして戦うことの強みを身につけるにいたった、と考えれば合点がいく。「もし平手友梨奈が〝俺様〟タイプのセンターだったら」「菅井友香が独断専行型のキャプテンだったら」「副キャプテン・守屋茜が勝負ごとに執着しない性格だったら」「齋藤冬優花がメンバーに意見することを躊躇する、遠慮がちな性格だったら」……いまの欅坂46にはなっていなかっただろう。彼女たちがよく口にする「誰ひとり欠けてはならない」というフレーズは、単なる仲間意識にとどまらず、それぞれのパーソナリティーとアイデンティティーを踏まえた上での発言なのだと、あらためて思わざるを得ない。それでいて、けっして仲良しクラブに終始しない意識の高さを1年の歳月を掛けて共有したことは、未来永劫、彼女たちの財産になっていくはずだ(と信じている)。

ここで、これまでの数ある取材から印象的な光景をいくつか紹介したい。
まず、3rdシングルのC/W曲「大人は信じてくれない」のMV撮影時、ダンスに苦手意識のあった長沢菜々香が「自主的居残りシュート練習」のごとく、夕食の時間も惜しんでダンサーと動画を確認しながら、振りを固めていたときのことだ。その横でダンスリーダーのひとりである鈴本美愉も踊り始める。食べることが大好きな長沢が食事も二の次で黙々と練習に励んでいたことはもちろん、近すぎず遠すぎない、極めてさりげない距離感で長沢に付き添うように踊り始めた鈴本の心意気(あるいは、単に触発されただけかもしれないが)に、胸を熱くしたのをよく覚えている。

また、発売中の「B.L.T.5月号増刊 欅坂46版」で密着取材した、4thシングルに収録されている志田愛佳・菅井友香・守屋茜・渡辺梨加・渡邉理佐によるユニット「青空とMARRY」のC/W曲「割れたスマホ」MV撮影時には、こんな出来事があった。スタッフ陣が撮影の準備をしている間、志田と守屋が「ディスコード、ディスコード……♪」と歌いながら、表題曲「不協和音」の振付の練習を始めたのだ。いままででもっとも難易度の高いダンスということもあるが、「振りを体に覚え込ませて、自分たちのものにしたい」という気概と気合いが、何とも頼もしく思えた。

そして、4月12日発売の「blt graph.vol.18」に登場する土生瑞穂の言葉にも、惚れ惚れとさせられた。
いわく、「作品をつくるときって、ちょっとでも21人の気持ちがそろっていないと、それが伝わっちゃうんですよね。誰がどの位置にいたとしても、全員が気持ちを入れて曲に合った表情や動きをしないと、いいパフォーマンスはできない。MVの撮影でも、カメラマンさんや照明さん、何十人ものスタッフさんがかかわってくださっていますし、どれだけカッコよく映る環境を用意してくださっても、自分たちがしっかりパフォーマンスをしなかったら何もならない。そういう意識が、この1年でみんな高まったんじゃないかなと思います」と。
グループ内だけではなく、現場をともにする人たち全員と心をひとつにする大切さを、経験の中で身に付けていることに彼女たちの強みを感じた。教えられたのではなく、学びとっている。その能動的でどん欲な姿勢こそ、欅坂46が描いてきた成長線の核をなしている、と言っていいだろう。

そういった小さな経験を積み重ねた結果、4月6日の「アニバーサリーライブ」ラストの「不協和音」の凄まじいパフォーマンスが生まれたのだと思う。鬼気迫る平手の表情のみならず、力強く全身を躍動させて複雑なフォーメーションを織り成していく21人の姿は、圧巻の一言だった。3時間にもおよぶステージの終盤、まるでアディショナル・タイムにゴールキーパーまで攻め上がり、全員攻撃を仕掛けて相手ゴールに襲いかかるような気迫には、ただただ圧倒されるのみ。常々「勝ちに行こう」とステージに臨む欅坂46の真髄に触れた記念すべき夜に、深読みの過ぎるこの暑苦しいテキストを書き残すことで、勝手ながら祝いの言葉としたい。

text=平田真人