初ワンマンから紅白へ。「KEYAKIZAKA」の衝動を受け止めよ!

昔話から始めることを許してほしい。
ちょうど30年前のことだ。今や伝説のバンドとなったBOΦWYが、1986年の夏に日本武道館で初めてライブを行った。この時、フロントマンの氷室京介はMCでこう叫んでいる。
「ライブハウス武道館へようこそ!」。
語り草となっているフレーズだけに、見聞きした人も多いことだろう。そのインパクトに匹敵する強烈なひと言を、まさか2016年のクリスマスに15歳のアイドルの口から聞けるとは思ってもいなかった。
「有明コロシアム、かかってこいっ!」。
奇しくも氷室京介がシンガーとしてのキャリアに自らピリオドを打ってステージから降りた年の終わりに、まるでスピリットを受け継ぐかのごとく平手友梨奈が言い放つ。煽るのではなく、挑むようにして。
その言霊が新たな伝説を刻む。そして、彼女たち──欅坂46の残した爪跡は永きに渡って語られていく。
そう確信した一夜だった。

有明コロシアムに設えられたステージに立つ彼女たちは、全身を躍動させながら、ありったけの声でメロディーを紡ぎ出す。情緒に訴えかけるのではなく、魂を震わせるパフォーマンス。「デビューして1年目」やら「怒涛の日々を過ごした」といったグループにまつわるドラマやストーリーは舞台上に持ち込まない。ただただ、持てる表現力のすべてを出し切って、楽曲の世界観を体現してみせるという気概と覚悟。それが伝わってきたからこそ、逆に目から流れ出るものを抑えきれなかった。

ここからは、とかく何事にもドラマを求めがちな傍観者の戯れ言だ。
欅坂46とけやき坂46(ひらがなけやき)を兼任する唯一のメンバー・長濱ねるが以前に語ってくれた「欅坂46は〝漢字〟と〝ひらがな〟で完全体なんです」という言葉が、ずっと気に掛かっていた。双方の長所と、互いに足りないものを皮膚感覚で知る彼女だからこそ気づくことができる、いわゆる「漢字欅21人」と「ひらがなけやき12人」のケミストリー(化学反応)の必要性。その掛け合わせが、想像し得ないエネルギーをグループにもたらし、見たことのない景色のある場所へと連れて行ってくれるんじゃないかと、勝手ながら期待していたところが、実のところあったりする。
しかし、ただでさえ人見知りがちで……それでも21人で苦悩をともにし、努力を重ねることで絆を深めてきた不器用な「漢字欅」の面々(※そこが彼女たちの魅力でもある)にとって、新たな仲間を受け入れることは思った以上にハードルが高かったと見えた。「ひらがなけやき」のメンバーたちにしても後輩という立場上、やはり遠慮というものがある。ただ、ある程度の時間と何かのきっかけがあれば距離は縮まり、連帯が生まれるだろうという予感めいたものもあった。そのきっかけとなり得るのが、このほどの「初ワンマンライブ」だったが、〝最高の舞台〟でグループは新しい局面を迎えることになる。
32人で歌う新曲「W-KEYAKIZAKAの詩」。
グループのアンセムとして歌い継がれていくであろうナンバーに込められたメッセージを、メンバーたちは真正面から受け止めて、また新たな一歩を踏み出した。
漢字でもなく、ひらがなでもない。ましてや「W-KEYAKIZAKA」の表記から読みとれる、2つの「欅坂=けやき坂」。また、Wは「We」や「With」など、さまざまな単語の頭文字でもある。何とも意味深長ではないか!

さらに深読みしてみよう。欅坂+けやき坂=KEYAKIZAKA。では、ケヤキザカ=カタカナケヤキは? 冠番組「欅って、書けない?」のMC土田晃之氏が、長濱の新加入とひらがなけやきの新メンバー募集のサプライズ発表に動揺するメンバーたちを和ませるため、「次は俺らカタカナケヤキの始動か!?」と発したことがあるが、彼の優しさを踏まえた上で、もっと広くとらえていいんじゃないかと考えたりもした。たとえば、彼女たちを支えるスタッフ陣。さらに、素晴らしい楽曲を提供する、あるいはダンスを振り付けるクリエイター陣。そして、欅坂46を応援するファンのみなさん。あなたも君も彼も彼女も、欅坂46を愛し応援したい気持ちがある人は、総じてカタカナケヤキの一員なのだと──。

先ごろ、佐藤詩織がブログ内で「欅ファミリー」というフレーズを使っていたが、漢字欅、ひらがなけやき、カタカナケヤキがそろってこそ、欅のファミリツリーは体(てい)をなす。つまり、長濱ねる言うところの「欅の完全体」とは、漢字とひらがなとカタカナの三位一体を指すのではないか……などと思いながら、有明コロシアムを埋め尽くした無数の緑のサイリウムが三角形を空に描くさまを見つめていた。

余談になるが、序盤に挙げたBOΦWYは、「まだ伝説になんかならねえぞ」という言葉を残してバンドの歴史を閉じた。だが、そのフレーズと裏腹に、彼らの楽曲は時代を超えて愛され、パフォーマンスの数々は語り継がれることになる。結果、今なお多くの音楽好きからのリスペクトを集めるレジェンドとなった。

話を欅坂46に戻そう。正直なところ、彼女たちにはまだまだ伝説云々などと言えないくらい、越えなければいけない坂がいくつもある。だが、結成からの1年4カ月という、けっして長くはない月日の間にも、数え切れないほどのドラマやストーリーがあった。その物語を生み出すのは彼女たちだが、語り継ぐのは「カタカナ」たる存在の役目。この先、伝説になっていくかどうかは語り手次第だろう。

いみじくも、発売中のB.L.T.年末年始増刊号 欅坂46版のインタビュー記事内で、石森虹花がこんな言葉を発している。取材はワンマンライブ前だったが……だからこそ、このタイミングに読み直すと胸に響く。

「私はワンマンライブでのパフォーマンスが、『紅白歌合戦』にもつながっていくと思っていて。そういう意味でも、本当に今までになかったような、伝説のライブにしたいと勝手に思っているんです。曲によってはかわいらしい振付もありますけど、すべてにおいて〝かっこいい〟を求めたいなって。それくらいのレベルに持っていきたいですし、この1年間の集大成として出し尽くしたいです。『紅白』は、ふーちゃん(=齋藤冬優花)が言ったように影響力が本当に大きいので、メンバー1人ひとりが特別な場に立つという覚悟をもって臨みたいですね。『何、このグループ!?』って思わず言いたくなる、画面を突き破るくらいの破壊力を発揮して、今年を締めくくりたいんです。欅にはそれができるっていう、根拠のない自信みたいなものがあるので(笑)、爪跡を残したいですね」。

この1年間、ひたすら駆け抜けてきた彼女たちは、2016年の大晦日に最大級の衝動を残そうとしている。

さあ、ともに行こう。次の坂の向こう側へ。Let’s get started! そして、誰よりも高く跳ぼうじゃないか。

 

 

text=平田真人